無機質へ色彩という祝福を─── (ページ16)

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開かれた(もしﾎﾟｹﾓﾝの声が聞けたら) ページ16

ある日、その扉は突如として開かれた。

開かれた扉から現れたのは…同じ緑の髪を靡かせる、ポケモンを連れた青年。

プラズマ団の王、Nである。

N「ゲーチスから入っちゃダメ、て言われてたけど…まさか誰かの部屋だったなんてね。

ボクはN、ハジメマシテ。」

貴「……王様？」

N「そう、ボクはここプラズマ団の王様だよ。」

ポケモンを知らぬ世界に生きるAは、ゲーチスの手によって秘密裏に隔離されており、戴冠式には出ていない。

ゲーチスの私室が七賢人やNの部屋とは別フロアにあるのも、Aの存在が秘密とされてきたためである。

当然Nを始め、七賢人の6人との直接的接触もない…全て父ゲーチスを介してであり、存在を知る者はほとんど居なかった。

その逆も然りで、Aはプラズマ団の王の名前がNであること以外知らなかった。

貴「王様が…何か御用ですか？」

N「うん、キミの名前も知らないし。

プラズマ団の王として、一員の名前を把握しないなんてあってはならないだろう？」

貴「…私の名はAです。」

N「へぇ…A、覚えておくよ。
キミのトモダチはどんな子なの？」

貴「トモダチ……？」

N「そう、トモダチ…」

トモダチ…そのようなものは知らない。

何なのか分からない。

小さな囁き声のような雑音が混じり合い、怪奇な騒音となって部屋に響く。

貴「この部屋には…父しか出入りしません。

そのようなもの、ありません。」

ポケモンのいない世界、その世界の中心に居る少女の声は淡々と真実を告げる。

初めてポケモンという友を知らぬ存在を知ったNは衝撃を受けるのであった。