ナイトボーイ. (ページ1)

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1. Night town ページ1

＿

街ゆく人達の声や、ちらほらと響く怒声。

あちらこちらに缶や煙草が散乱し、

不意に鼻をつんざく甘ったるい香水。

そんな夜の街を、ある"女性"は1人歩いていた。

短めのフレアスカートをひらつかせ、上には可愛らしいパフスリーブを着た華奢な彼女は、

少し茶色がかった暗い髪で顔を隠すように夜道を進む。

ふと、彼女の前方に大量の人影が見えた。

数十人の女性を連れた、スラッとしたいかにもチャラい男性。

その男性はこの辺りでは誰もが知る"ナイトボーイ"。

お金持ちで顔立ちも良く、この夜の街に頻繁に出入りしては女性をたぶらかせていると言う。

周りの人達は彼に気付くとざわめき、その人影から逃げるように道を開けた。

彼女は少し遅れてその様子に気付き、ギリギリ彼の傍から離れようと彼の横を通り過ぎた。

そのとき＿＿

『ちょっと、そこのお嬢さん？』

彼女のか細い手首を掴まれ、通り過ぎた筈の彼が彼女を捕らえた。

彼女は肩を震わせ、声も発する事もできないまま彼を凝視した。

『はっ、そんな怖がらないでよー、

ねぇ、俺と一緒に一夜過ごさない？お嬢さんかわいーし、絶対損させないよ？』

彼の周りの女性の視線が彼女に刺さる。

彼女は咄嗟に首を横に振り、

「だ、大丈夫です‥」

と、小さく震えた声で断った。

『えー、何で何で？あ、もしかして未成年？

でも未成年だったらこんな夜遅くまで外居ないよねー、お嬢さん、楽しいことしたくない？』

ピアスがギラギラとネオンに照らされている。

何ど首を横に振ろうと離す気の無いその手や瞳。

すると彼女は大きく息を吐いて‥

＿「あの！！俺、"男"なんで！！」

と、低い声で叫んだのだ。

目の前の彼や周りの女性は唖然とし、その"男性"を見つめた。

『‥‥え？ちょ、君‥男？』

「っ‥そうです、‥だから‥あの、

手離してもらっても良いですか？？」

男性はギロリと睨むと、彼は瞬時にその手を離した。

すると男性はすぐに背を向け走り出した。

＿『‥あっ‥ちょっと！』

男性の可愛らしいバッグから、走り出した隙にポトリと刺繍の入った黄色いハンカチが落ちた。

『‥kochi Yugo？』

彼はその名前らしき刺繍の入った黄色いハンカチを拾い、胸元にしまった。