1.貴族 ページ3
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結局いつも通りの修道服でグリム館まで来た私。
正装といってもそんなの買えるお金など私にはなく、普段着でも良いと招待状には書いてあった為、結局はこのままの状態で来たと云う訳だ。
私が住んでいたターメル州とは全く違い、人々が笑顔で道を行き交っている光景を何回も目にした。
隣町と云うのがまるで嘘みたいだ。
貴族の街サリエル。貧民の街ターメル。
早くこの差を縮めたい。差別なんかされない街にしたい。
って、そんなことを願っても、所詮は小っぽけな一庶民の夢。
誰も聞いてくれやしない、か。
私は深いため息を溢しながら首が折れそうな程大きいグリム館の館内へと足を踏み入れた。
館内に入るとそっと耳の中に入ってくるワルツの音楽。
その音楽と伴に優雅に踊っている貴族の人達。
私はその見慣れない煌びやかな光景に、小さく「おぉ」と感嘆の声を漏らした。
「そんなに驚きましたか?」
不意に耳元で囁かれるようにして聞こえたそんな声に、私は驚きながら後ろを振り返った。
「はは、そんなに驚かなくても(笑)」
そう言って、爽やかな顔で微笑む美しい茶髪の青年。
メチャクチャ美青年だ。言葉で形容しづらい程美青年だ。
う「あ、申し遅れました。僕の名前はうらたぬき、と申します。一応世間的には“グラシェ伯爵”として通させて頂いておりますけど。どうぞ宜しくお願いしますね」
そう言って、また爽やかな微笑みを向けたうらた...さん?
『あ、私の名前はA・レイヤーと言います。此方こそ、どうぞ宜しくお願いします』
そう言いながら、深く深くお辞儀した。
相手がまさかあのグラシェ家の人なんて知らなかった。から、これはせめてもの小さなお詫びだ。
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心愛 - 更新楽しみに待ってますので戻ってきてください! (2018年11月28日 22時) (レス) id: 1b1d47c664 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:レ=と=ロ | 作成日時:2018年10月28日 0時