2 ページ4
そんな偽善的で欲深い私が彼と出会ったのは、高2の夏のことだった。
学校からの帰り道、居残りでいつもより少し遅くなってしまって、辺りは暗かった。
静けさに包まれた駅。薄明るい出口を抜けて、短い橋を渡る。家路へと急ぐ私の耳に、突然男の悲鳴が聴こえてきた。
悲鳴は、少し離れた階段の下から聴こえているようだった。
そこを降りると木々や建物の影になってかなり暗くなってしまう。危ないから近づくなと小さい頃から教えられていた所だった。
私は悲鳴が無性に気になった。
どこかの気違いが唐突に叫んだのかもしれないし、ただ調子に乗った学生達がふざけただけかもしれない。けれど、気づくと私は階段に向かって足を踏み出していた。
コツコツとローファーが地面を蹴る音だけが響く。
剥き出しになった、どこと繋がっているのか検討もつかないパイプ。塗装の禿げた壁。人が寄り付かないためか、階段下は若干の荒廃が見られる。
かなり下まで降りた所で、私は人の気配に気がついた。下に誰か居る。もう悲鳴は聴こえないが、確かに曲がり角の向こうに誰かが居るようだった。
ここらで引き返そうか?悩む頭と裏腹に、足は進む。
そろり、そろり。ゆっくりと、壁から顔だけで覗く。
人が居る。
暗くてよく見えないが、どうやら同じ学校の制服を着た男の子のようだ。
悲鳴は彼のもの?分からないままに、私はその少年に近づいた。
52人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ポエム(プロフ) - 【お知らせ】登場人物イラスト、世界観イラスト更新しました。 (2019年3月26日 16時) (レス) id: 40cccc9e32 (このIDを非表示/違反報告)
ポエム(プロフ) - あうんさん» ありがとうございます!!気に入ってもらえて嬉しいです…!更新頑張りますね!! (2018年11月2日 22時) (レス) id: 40cccc9e32 (このIDを非表示/違反報告)
あうん(プロフ) - ヤバイ…どストライクすぎます!あんずちゃんの狂った感じがたまらないです!更新応援してます! (2018年10月31日 6時) (レス) id: 8621d19bdc (このIDを非表示/違反報告)
ポエム(プロフ) - 林檎さん» ありがとうございます…!!更新頑張ります^^ (2018年10月13日 7時) (レス) id: 40cccc9e32 (このIDを非表示/違反報告)
林檎 - 読みやすいし面白いです!応援してます! (2018年10月10日 14時) (レス) id: 7f2ddeb6c2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ポエム | 作成日時:2017年10月21日 9時