猟奇殺人犯の彼と私

9 ページ11

「相沢君の彼女だったんですよね、その子…」
　
　「彼女なんかじゃないよ。僕の顔目当てで勝手にすり寄ってきただけの馬鹿女だ。何も知らないくせに、知ったような口聞くから…」
　
　「そっ…そんな理由で殺したんですか？」
　
　「ああそうだよ。あいつが僕の気に障るようなことをベラベラ喋ってくるから、腹が立って絞め殺したんだ」
　

　彼は後ろを向いている。遺体が入った袋を握る手に、血が跳ねてこびり付いている。
　

　「…それだけ？」
　
　「…それと、僕がただ殺したかっただけ。というか、そもそも最初からそれが目的で付き合ってたんだ。…僕のこと信用させて、裏切った瞬間のあの顔。それを見るためだけに、今までにも何人か殺してる」
　
　「………」
　
　「それと僕、死体以外の女に興味無いから。生きてる女とヤったって何も面白くないし。まずは殺さなきゃ何も始まらないんだよね」
　

　「…………あははっ」
　
　「何笑ってるんだよ」
　
　「…いや、相沢君が思った通りの人で嬉しかったんです」
　
　「はあ？」
　

　本当に、最悪最低の男だ。

　人の命をこんなに軽く扱って。自分の欲求の為に殺して。なんて酷い男なんだろう。捕まれば間違いなく即死罪だ。

　
　「相沢君、やっぱり私、相沢君のこと好きです」
　
　「いや待って。今の話を聞いても本気でそう言ってるの？僕、お前に諦めさせるためにわざわざ本当の話を…」
　
　「だからこそ好きなんです。私、相沢君のこと諦めるなんて死んでもしません」
　

　彼は絶句している。そんなにおかしなことを言ったつもりはないのだけれど。
　

10→←8

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す