◇ ページ21
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そう言った時だった。
もの凄い音がして、後ろの格子窓が砕け散った。
あまりに急な出来事に倒れるようにしてしゃがみ込む。
散乱した鉄格子、月明かりで伸びる影。
床に写っているのは、大きな鎌のシルエット。
「きりやん」
まさか、そんな、ついさっき束の間に見た夢が。
その求めていた声に、思わず熱い何かが込み上げてきて振り返ることが出来ない。じわりと視界が滲んで、涙が止め処なく零れ落ちる。
窓から降り立っただろう足音がすぐそこに聞こえた。
ずっと会いたかった。
もう一度、会いたかった。
「スマイル……！！」
「待たせて、ごめん」
そう言って悲しそうに微笑む、スマイルの姿が。
ゆらりと炎が揺れるような漆黒のローブに、横にずらして付けている骸骨の面、大きな黒い鎌。死神を象徴する姿かたちにすっかり変わってしまった彼は、それでもあの金のブローチと俺があげたストラップだけは胸元につけてくれていた。
そんなスマイルの変化を最も印象づけるのは、紅く輝いた両眼。その瞳は今も、最後に見た日と同じように赤赤と輝いている。
ただその眼差しは、あの日のように何かに支配されている様子はなく、彼の自我を保っていた。
暖炉の炎のような優しい赤色だったのだ。
「俺、もう会えないかと、思って、……っ、スマイル……どこいたんだよ、……」
「ごめん、あの時は。……俺が悪かったよ。」
「…っ、ほんっと、バカ、……」
涙で歪む視界の中に映る彼の姿を見て、安心なのか、全身の力が抜け落ちる。何も食べていなかった俺は思わずその場へ崩れるようにして倒れた。
「ちょ、おい！」
慌ててスマイルがその肩を支える。
彼に体を預けながら見えた景色の端っこに、＿＿いつからか己に突きつけられた銃口と、群青色が見えた。「警官さん」と掠れた声を掛ければ、その影は微かに揺れる。
「…そこに、いるんだな」
「……！」
おそらく彼には未だスマイルが見えていないのだろう。
しかしそこに何かを悟ったのか、彼は仕方なさそうに微笑むと、銃を下ろして言った。「行け、俺があとの処理は何とかしておくから」
「いいの、？」
「……いいんだ。独房エンドなんて、殺人鬼と死神の終わり方にしてはつまんないでしょ？」
スマイルが俺を抱えあげた。
月明かりが差し込む窓枠に足をかけて、出る間際に振り返る。
「...ありがとう」
「…またいつか」
大きな満月が輝く夜空に、彼と二人で飛び立った。
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秋乃みなと(プロフ) - ゆんさん» 最後まで読んでいただきありがとうございました！心に残る文を書けていたなら嬉しいです...! 次回作でまたお会いできたら幸いです。本当にありがとうございました！ (2022年5月3日 7時) (
レス) id: 480327bdf9 (このIDを非表示/違反報告)
ゆん(プロフ) - 完結おめでとうございます。言葉選びや情景描写が大好きです。思わず泣いてしまいました。素敵な作品をありがとうございました。 (2022年5月2日 21時) (レス) @page24 id: 90a7e1b245 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：秋乃みなと | 作成日時：2022年3月20日 18時
