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この無機質な壁と格子窓にも随分と慣れてしまった。
灰色で塗り固められた室内には何もない。人一人分寝るためのベッドと、何もない机と椅子。その中に溶け込むように座り込む自身の体は随分と軽くなって、まるで琥珀のようだと謳われた黄金の瞳は鏡を覗き込んでもその輝きをしていない。
「夕食だ」
「……、」
小窓から配給される味の薄い食事も、もうしばらく食べていない。味のしなくなった栄養素ばかりを摂るのは気が引けるどころか吐き気すら感じてしまって、退けるようにトレーを机の隅へ置いた。それを見て警官はため息をつくと、観察なのかなんなのかは知らないが記録をとっていた。
あの日の警察官だ。
警棒にぶら下がった、尾の先を群青に染めたストラップ。その瞳がなにを考えているのか俺には分からない。
「ねぇ、警官さん」
「…」
「…昨日、死神を…さ、信じないって、言ったよね」
「………あぁ」
息も途切れ途切れにそう問うてみる。
嗚呼、もう話すのも億劫だ。それでもこうして話すのは、なんの理由でもない。
「……死神って、ほんとは、不器用で、…馬鹿で、何考えてんのか、わかんなくてさ………。滑舌悪くて、おかしくて、それで、……」
「ニコちゃんマークのブローチ」
「……え？」
遮られるようにして聞こえたその言葉に耳を疑う。
「流れたブラウンの髪、きっちりしたスーツ、……先が紫の、尻尾のストラップ」
ぽつり、ぽつり、彼を形容する言葉が次々と。
鉄格子に隠れて警察官の表情は見えない。けれど確かにその言葉はスマイルのことを指していて、喜び、期待、それを覆い隠す程の疑問が浮かび上がる。
「なんで、お前…スマイルのこと、知ってんの……？」
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秋乃みなと(プロフ) - ゆんさん» 最後まで読んでいただきありがとうございました！心に残る文を書けていたなら嬉しいです...! 次回作でまたお会いできたら幸いです。本当にありがとうございました！ (2022年5月3日 7時) (
レス) id: 480327bdf9 (このIDを非表示/違反報告)
ゆん(プロフ) - 完結おめでとうございます。言葉選びや情景描写が大好きです。思わず泣いてしまいました。素敵な作品をありがとうございました。 (2022年5月2日 21時) (レス) @page24 id: 90a7e1b245 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：秋乃みなと | 作成日時：2022年3月20日 18時
