好きになんて。 (ページ2)

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｢私はどこかに売られることになるんですか？｣

漫画とか小説の世界で見たことがある。
借金を背負った女の子が夜の世界で働くとかそういうお話。

男｢さっき言ったじゃん。貰い手が決まってるって。｣

そう言えばそんなことも言ってたような気がする。

｢それってどういう意味ですか？｣

男｢本当はお金を返せるまで大学を辞めて、それこそ売られるっていうか夜の仕事をしてもらわなきゃいけないんだけど、あんたはある御曹司に気に入られてたみたいで結婚を条件にその御曹司が借金を代わりに返したんだよ。｣

結婚を条件に？え！？結婚！？

｢･･･相手は誰なんですか？｣

私のことを気に入ってるってことは知ってる人ってことだよね？
じゃなきゃ相手も私みたいな庶民のことなんて知らないだろうし。

男｢藤ヶ谷太輔って名前の若手社長。｣

考えても私の記憶の中に藤ヶ谷という名前の人はいない。

｢私とはどういう知り合いなんですか？｣

男｢そこまでは知らない。とりあえずあんたはこの結婚を受け入れなきゃ大学辞めて夜の仕事をすることになる。｣

今どき大学出てなきゃ借金返し終わったとしても別の就職先は見つからないだろうな。
小さな声だったけど男の人がそう言ったのが私にはちゃんと聞こえてた。

就職難な今、借金を返し終わるまでに10年だったとしても30になる。
男の人の言う通り、30歳の人がそう簡単に仕事が見つかるとは思わない。
ましてや、借金をしていたこととか夜の仕事をしていたこととかバレたらもっと難しいだろう。

実質、私に残っていた選択肢は
藤ヶ谷太輔という人と結婚すること
しか無かった。

｢結婚を受け入れます。｣

男｢それが賢明だと思う。というかあの藤ヶ谷さんと結婚出来るなんて幸せだろ。藤ヶ谷さんの会社にはファンクラブもあるって聞いたことあるくらいモテる人だし高スペックだぞ。｣

だからなんだと言うのだろう。
私からしてみたら知らない人と、顔も見た事ないし話したこともないのに結婚するなんて不安しかない。

男｢じゃあこれ。藤ヶ谷さんに渡してあるあんたの情報。間違いは無いだろうけど一応確認しといて。｣

それには私の名前や生年月日だけでなく私の友達について、学校での生活についても詳しく書いてあった。

男｢それじゃ、明日の夜に藤ヶ谷さんと会うから、この家出る準備を今夜中に済ませとけよ。｣

そう言って男の人は帰って行った。