太宰の妹は光を心に灯さない−３譚−[文スト]

７６話「澱む思考回路」 ページ6

…


力で連れ戻すのは簡単だった

少々苦戦するだろうし
どちらかの腕は取られるかもしれないが

(腕が欠けるか、五体満足で帰れるかは
五分五分といったところかな)

あの人選なら腕はあげてもいい

タダでは無い
もちろん何人かの命ももらうけどね


ただそうしなかったのは

…戻ってくるなら彼女の意志で

が一番いいから

無理矢理連れてきても
逃げ出すかもしれない

自分の意志で戻った訳では無いのなら
探偵社が助けに来るかもしれない

結果はどちらにしろ
彼女は喜ばない…

だからダメだ



そう、彼女は日の元で笑って
私は闇を見て血を浴びていればいい


私の生き方は変わらない



夢はいつか覚める


一緒いた時間を夢というなら
楽しい夢は続かないと言うこと


あの子は光に憧れたのか…

あの人と同じように…

(いや、これは思い出してはいけないものだった)

…

たしかに鏡花は
まだ(・・)35人だけ

手遅れにはなっていないのかもしれない


嗚呼…誰にたいしても救済は
有り得るのかな？

長く闇に浸っているからといって
手遅れとは言いきれないか…


……

救済

救い

光

導き

裏切り


…


『ダメだ…呑み込まれる』



思考がよどんできたため
考えるのをやめる

そう呟いた瞬間
ベッドから立ち上がり

歩きながら

肩にかけていたコート
スーツの上着
タイトスカートを脱ぎ捨てる

部屋の中に服が散らばるなか

着いたのは風呂場
片手でネクタイを外し足元に落とした

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