7話 ページ8
何とか国語の授業を乗りきり、全ての授業が終了した。
和典たちと特別クラスに行き、和臣が来るまで談笑する。
そこへ、和臣が立花さんと勢いよく入ってきた。
笑いながら話していた私と和典と貴和は視線を其方へ向けた。
因みに、和彦は星座早見盤をひとり離れたところで動かしている。
「どーした、若武」
和臣は、ひとりひとりに視線をくばってから、おもむろに口をひらいた。
「大事件だ」
………うっわー、相変わらず何とまあ……。
貴和が、ふっと笑って口をひらいた。
「秀明の前でネズミでも死んでたのか」
「いいや」
次に和典。
「誰かが階段から落ちて、鼻の頭でもすりむいたのさ」
そして私。
「そんでもって自分もつられて落ちたのよ」
私たちは顔を見合わせ、それからクッと笑い出した。
和臣はもちろん、火がついたように怒ってどなった。
「オレのチャリが盗まれたんだっ！」
私たちは一瞬、笑いを消し、真剣な表情になった。
とたんに和彦が、身をのり出すようにして言ったのだった。
「若武、乗ってきてたのか。勇気あるよなあ。どうやって親を説得したのか教えてくれよ。オレも、チャリ通にしたい」
和臣は、完全に頭に血がのぼってしまったらしくて、ツカツカと和彦の前まで歩みよると、その手から星座早見盤を取りあげ、フリスビーみたいにポーンと教室の後ろにほうり投げた。
「わっ、オレのっ！」
和彦は、あわてて立ちあがったけれど、そのときには星座早見盤は後ろの黒板に衝突し、音をたてて床に落ちていた。
「バカやろう、若武……」
和彦がそれを拾いに行くのを和臣は無視して、私たちの机の上に、ドンと両手をついた。
「リサーチ開始だ。犯人を見つけるんだ。行こう！」
私たちは、しかたがないといったようにため息をつきながら、立ちあがった。
「乗ってくるなよ、新品のチャリなんかに」
「そうだよ。盗られるのあたりまえじゃないか。鍵や盗難防止用チェーンなんか、簡単にあくんだしさ」
「そうよ、そんなのに乗ってくるなんて盗ってくださいって言わんばかりじゃないのさ」
私たちはブツブツ言いながら出ていき、その後に和臣、立花さん、和彦の順でついてきた。
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作者名：ゆきしま | 作成日時：2021年3月25日 17時
