12話 ページ13
上宮side
特別クラスにみんながそろうと、和臣が黒板に、「マウンテン・バイク消えうせ事件」と書いた。それに立花さんが変更を希望した。すぐに書き直した和臣は気取ったふうにこう言った。
「では、諸君」
それを聞いた瞬間、私と和典は二人してへきえきした表情になった。ほんとに、こいつは……。
そんな私たちを気にもせず、和臣は自分の言葉の響きに酔うように、得々として先を続けた。
「これについて考えてみようではないか」
そう言いながら、カタカタとチョークの音をたてて黒板に書く。
犯行時間ー17時5分〜21時3分
「オレが秀明に着いたのが、午後5時5分。さっき出ていったときが9時3分だったから、はっきりしてる」
どんどん場所、被害者、盗難品まで書いていく。そこで立花さんに「買ったばかりのピカピカのマウンテン・バイク」のところを訂正されていた。
まぁ、和臣基本余計な単語ばかりだからな。和臣は不服そうだったが、立花さんの本格的という言葉にすぐさま書き直していた。弱いよなぁ、そういうのに。
「特徴は、それだけ？」
和彦が、おっとりと言った。
「ほかには？たとえば、何かがついていたとかさ」
和典が、その目に意味ありげな笑いをふくんで和臣を見た。
「あるだろ。若武、言えよ」
え、なんだろ。興味津々で和臣を見ていると、和臣は、ちょっと具合が悪そうに口をつぐんでいたけれど、やがてあきらめたように言った。
「ハンドルに、サッカーボールのキーホルダーがついてた」
和典が、その後を続けた。
「同じクラスの女からもらったヤツだ。バレンタインデーに、チョコレートといっしょにだ」
おおー。さすが和臣、もてるねぇ。
貴和が、ピュッと高い口笛を吹いた。
「やるじゃん、若武。そいで今、その子とどうなってるの？」
「あ、それ気になる」
私もそれに便乗する。
和臣は、赤くなって私と貴和をにらんだ。
「黙れよ。捜査と関係ねーだろ」
「関係あるね。その女がからんでるのかもしれない」
「あの子は、怪力じゃないぞっ！」
その言葉に私たちはいっせいに顔を見合わせた。
「おーっ、あの子だって！」
「あやしいじゃん、若武」
「どーなのさ、和臣。教えてよー」
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作者名：ゆきしま | 作成日時：2021年3月25日 17時
