97話 ページ50
階段を一段ずつ上り、或る部屋の扉を開ける
「おや。珍しいの、童。そなた一人かえ」
「………」
初めて会った時とは違う和装でのんびりと寝台の上に座って読書をしている尾崎紅葉がそこに居た
何か長ったらしいな、名前全部呼ぶのは
尾崎さんで良いか。喋る時は早々呼ばないし
「ゆるりと寛いでゆけ。見ての通り幽閉の身ゆえ茶菓子も出せんがの」
「幽閉……」
「そうじゃ。太宰の掛ける鍵は目に見えんでのう」
紅葉姐さんは当面は無害だよ。だなんて口元に人差し指を近付けてあざと気障く云っていたのを思い出した
ああ云うのはあまり受け付けていない
顔が良いからって誰もが誰も許すと思うなよ
「で?何用じゃ童。私を消しに来たか?あるいは不手際を為出来して前線から逃げて来たかのう?」
其の言葉に躰がビクッと揺れた
君、嘘つく時に直ぐバレる系の人間だろ
「何じゃ、図星か」
「……」
春野さんとナオミさんを起こす為に手助けしようとした時の傷付いた様な顔が脳内でチラつくが無視する
こんなの気にしてたら先に行けないだろ
「ふん……太宰は面倒な教え子ばかり受持つのう。忘れろ忘れろ、貴様如き豎子の所業。端から誰も期待しておらぬわ」
「……お茶、やりますよ」
彼女から急須を受け取り湯呑みに注ぐ
既に茶葉は入っているから彼女好みの味だろう
それを尾崎さんに渡せば普通に飲んでくれた
「お主、まるで別人よの」
「え?」
急に何だ、心臓に悪い
それから中原さんと全く同じ事を云う辺り流石だと思ったのは心の中に仕舞っておこう
「先刻の躰の揺れは真じゃろうが、あれとは打って変わって別人じゃ」
「は、はぁ……?」
「…まぁ良い、気にするな。私の戯れ言じゃ。それより善いのか?太宰の傍に居らんでも。戦争中じゃろう?」
「……太宰さんは交渉に向かった。政府の代理人と」
そう云えば少しだけ空を見ては納得したように再び此方を見た
「成程のぅ、異能特務課と云えば国内最高峰の秘密異能組織じゃ。味方とすれば探偵社最大の切り札となるじゃろうな」
「まるで他人事……」
「…そうさなあ、今すぐお主を斬り殺し首領へ今の話を報告に参じるべきかものう」
「……」
「と云いたいが太宰にそれは禁じられておるしの」
「太宰さんが貴女に何をしたんだ」
「それは……とても云えぬ」
「……」
尾崎さんの赤面は何か艶っぽくて良い
こりゃ敦なら騙される
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銀色ミカン(プロフ) - 1話から一気見しちゃいました!面白いです!更新待ってます。頑張ってください! (2017年12月17日 2時) (レス) id: c55513f974 (このIDを非表示/違反報告)
時雨零(プロフ) - お待ちしておりました!おかえりなさい! (2017年11月14日 0時) (レス) id: 7585b82a1c (このIDを非表示/違反報告)
芋娘@悪の伝道師?ウリエル?(プロフ) - ファッ!?オーストラリア!?あらまー…お気を付けて!! (2017年10月31日 14時) (レス) id: a51cded6e4 (このIDを非表示/違反報告)
紅月(プロフ) - オーストラリア!!!羨ましい…!楽しんで下さい!!! (2017年10月30日 22時) (レス) id: 97c5c84046 (このIDを非表示/違反報告)
ロイゼ@魔法契約民(プロフ) - いってらー、です! 楽しんできて下さいね(^^*) (2017年10月30日 16時) (レス) id: 677bf3b84c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:のんのーー | 作成日時:2017年10月15日 20時