【文豪ストレイドッグス】私は君で、君は君 2

96話 ページ49

亦……か

あの暗い空間だ


意識が飛んだ上に此処に居るという事は矢張り敦が今大暴れって感じだな




「もう此処まで出来るなら良いじゃんか……」




何がそんなに駄目なの？

てか私って要らない存在なんだけど、君は何でそこまでして私を表に出したがるかな



私は君の居場所を君の代わりに作った


鏡花ちゃんの件は……まぁ仮入社まで見送った



それ以外に何を求める？




光が見える方向とは別の方向に足を進めようとするけど


矢張り幾つもの手が躰を掴んで離さない



セクハラで訴えるぞ

だなんて冗談は一人の空間では虚しく消えるだけで無意味だ


それにその手は何を学習したのか、今度は光の方向へ背中を押して来る



はいはい、行けば良いんでしょ。行けば



抵抗する事すら諦めて光の方に足を運べば、真っ白に包まれて再び意識を飛ばした




＿＿＿







＿＿






＿





目を開けると、何故か頬がズキズキする

殴られた感覚だ


その頬は湿っていて、この躰は地面に座り込んでいた




あーあ、こんなに泣いちゃって


だからあの時に反抗するなって云ったんだ


綺麗な顔が浮腫んでも知らないよ？




あーでも過去の事を責め立てても意味無いからこの話は終わりにしよう


ご免な。止める事が出来なくて




あ、否、本来ならばそれが正しいんだよ？


本体(オリジナル)じゃない私が本体を操作するなんて不可能な事なんだからさ



でもさ、君の精神は操作されても私の精神は操作されて無かったから


せめて少しだけでも止める事が出来たら良かったのにね




この責任は凡て私にある



君の事を止める事が出来なかったし、春野さんとナオミさんを逃がす事すら出来なかった




ね？私は主体であった癖に最終的には傍観者になったんだ


簡単に云えば見て見ぬ振りをしたって事




だから、この痛みは凡て私のものであって君のものじゃない


気負う事は無いよ、敦




「敦君……？置いてっちゃうよー」


「す、済みません！今行きます！！」




腰を持ち上げて二本足で立ち、きっとこの頬の痛みの原因であろう彼の後ろ姿を追い掛ける


こんなに敦の事を庇った後に思うのはアレだが



それでも何処か、自分の意思で動くこの(敦の)躰に溜め息を吐いた




それでも無意味な私は無意味に生きているのだと実感してしまったからだろうか




「…頬、大丈夫かい？」


「僕が悪かったんですからこれ位！」




この痛みすらも生きている証なのだ

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