俺は結局"兄"なのだ ページ49
「_ーい、おーい?」
『ん?あ、なんだ君か』
昨日俺が連れてきたんだった。結局昨日寝ちゃったんだけど、ここにいるってことは普通にここにいていいってされたんだよね、少し安心した。
『おはよう』
「ん。...聞いてなかったんだけどあんた名前なんていうの?」
上目がちにそう聞いて来た。
『あぁ、俺は月下A。呼び捨てで全然かまわないからね。君はなんて言うの?』
「銀時」
自慢げにそう言い放った。子供が虫なんかを捕まえて見せつけてくるのに似たものがある。
『良い名前だね、似合ってる。』
そう言いながらふわふわの髪を優しく撫でると、少し気恥ずかしそうに頬を掻いた。
『じゃあ"銀"、今日からよろしくね』
「おう。えっと...やっぱいい」
そう言いながらそっぽを向いてしまった。子供心は難しい...
「よろしく、兄貴」
『おうよ!』
兄貴と呼ばれて少し張り切ってしまったのはここだけの秘密だ。
♯
銀と松陽さんの二人は案外仲良くしていて、心配していたのが馬鹿みたいと思えるくらいにはその悩みは綺麗に消えていた。
先生先生とついていく姿が見え、とても微笑ましい。日々の癒しが増えたなと確信した、
「兄貴!」
『どうしたの?』
ビックリするほどの元気を余らせて洗濯中の俺を呼んだ。
「遊ぼうぜ!」
なにを悪びれるでもなく無邪気にそう言ってきた。
『...話だけならいいよ』
それを皮切りにいろんな話をしてくれた。と言っても大体先生がどうとかそう言う話ばかりだが、俺には十分面白い話だった。
「兄貴もなんか話してよ」
一通り離し終えるとそう言った。
『ん〜そうだな...銀色ってどんな色か知ってる?』
そう問いかける。
「え〜?銀色は銀色だろ?」
『それはそうだけどね。例えば、外国のおとぎ話の吸血鬼とか狼男とかの悪役は銀色が苦手なんだって。作り話だけじゃなくて実際に幽霊とかは意地でも近寄ろうとしないみたいだよ』
「なんか中二臭」
銀にとってはあまり面白い話しじゃないようで、そんなやっかみが飛んできた。
『そんなこと言わないでよ。まぁだから、銀は誰かを守れるような剣を振るうんだよ』
「...先生みたいなこと言うんだな」
不貞腐れながら不満げに銀は言った。
『そりゃね。銀に人切りなんかにはなってほしくないから。じゃあ洗濯物終わったから俺は戻るね』
「暇なら手合わせしてくれよ」
『気が乗ったときにね』
空になった籠と、弟の残念がる声を手に廊下を歩いた。
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作者名:男主愛好家 x他1人 | 作成日時:2020年11月1日 13時