飯を食べればみんななかよし ページ47
隣でおにぎりを食べている子供の傍らで、安堵と緊張でまともに米が喉を通らなかいが、まぁ何とかなって良かったとそれだけが今の思考を支配していた。
おまけを入れてくれたおっちゃんはきっとこれを見越していた神様かなんかなんだ。
鳴り続ける心臓を抑えているとこの子は話しかけてきた。
「あんたも物好きだよな」
『...それはハグに対して?』
「いや、それもそうだけど...普通俺見たら言うんだぜ、鬼だなんだって」
そう言い捨てる。言われなれてると言わんばかりの姿に昔の松陽さんが目に浮かんだ。
『俺には、ご飯を美味しそうに食べる子供ってくらいにしか見えないけど?』
「ちげぇよ!見えないの?この髪と目!」
少し怒ったように自分を指さす。
『う〜ん...紅い目も、
頭がおかしいんじゃないのかとでも言いたげにこっちを見て、ため息をついた。
『君はどうしてこんなところにいるの?』
「死体漁り。こうでもしないと生きられないし」
口ぶりを聞く限り両親はどちらもいなそうだ。
「ずっと独りだったから...」
『じゃあ、これからは俺がここにくるよ』
何を言ってるんだと目を丸くしていたが、構いなしに喋り続けた。
『今日みたいにまた一緒にご飯を食べて、喋り相手になってほしいな...なんて、わがままが過ぎる?』
「...本当に物好きだな」
なんて、困ったようにわらうこの子の頭をそっと撫でてやった。
『だからさ、もう刀なんて握らなくていいんだよ』
「それは嫌だ」
『即答かよ。今世紀一番カッコつけたっていうのに...』
こんな世の中で、それでもいつか君が血を浴びなくて済むような未来を望むのは罪なんだろうかと、心の中で問い続けた。
♯
『それじゃあ俺は帰るから』
「おう、ついてくわ」
『え?』
あ、いや、そうか塾生になって貰った方が安全か。何を今まで語り散らかしてたんだ。
てか雨降ってるしもう日も落ちてきたしどうしようかな...ていうかこの子裸足だな。歩かせるのは酷か?
『ちょっとおいで』
「?」
ちゃんとこっち来る辺り子供は純粋だな。騙されないか心配だわ。
『よいしょ』
「は?ちょっと!」
なんか騒いでるけど別に大丈夫だろ、面倒だし抱っこして走るか。
...にしても丁度いいな、手に馴染む。松陽さんが言ってたことも頷ける。
(蛍の時以来かな...)
なんて他愛もないことを考えながら走り続けた。
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作者名:男主愛好家 x他1人 | 作成日時:2020年11月1日 13時