しばらくかわいそう書かない(泣) ページ40
『恐れてる?』
柴庭のことかな?いや、わからない。
『なにに恐れているように見えますか?』
正直に教えを乞う。
「貴方を深く知っているわけではないので確信めいたことは言えませんが...人と関りを持つことに抵抗があるように見えますよ」
『抵抗...』
そう言えば、俺は今までどうやって人と関わってきたんだっけ。
柴庭が怖いのだって確かな事なんだ...でも、仲良くしていたいって思った時もあった。リリィも今となってはああだけど、俺にとっては家族と同じだった。蛍も、母さんも父さんも本当はもっと一緒に居てほしかった...あれ?
何がしたいんだ。願いなんて今は....
ぐちゃぐちゃになってきた頭の中から一つ浮かんできた。
『裏切られるのが、怖いのかも』
そんな戯言吐く。松陽さんはさえぎるでもなく、黙って聞いていてくれた。
『両親はすぐに死んで、良くしてくれた人はその敵で、最後に残った妹は兄と慕ってきてくれた女の子に殺されて。もうそんなことで人を憎みたくないのに...』
いつの間にか人が嫌いになってたんだ。裏切られる感覚がどうにも離れなくて、でも
『俺にとって松陽さんも朧さんも、もう。とっくに大事な人になってしまった...!』
ここにいると変に幸せな記憶と重なるのは、二人が家族と重なってしまったから。ただの一日一緒に居ただけでもこんなになるなんて思わなかった。この人たちともっと親しくなってしまえば裏切られたときに辛くなる。そんなのもうたくさんだよ
これ以上紡ぐ言葉が見つからず、手で顔を覆ってしまった。
「そうですね」
口を開く。
「私も、血を受けたあの子も簡単には死なない。ここにいる限り、誰も貴方を裏切る真似はしませんよ...」
背中にポン、と手が置かれた
「少し、身を預けてみてもいいんじゃないでしょうか」
...あそこから助け出された時からずっと、信じてみたいと思ってた。きっと大丈夫だって。でもそっか、きっとなんかいらなくて最初から伸ばされていた手を、拒まず握っていれば良かったんだ。
『ここにいたいです』
混じりけのない純粋な思いだ。本音を話してしまえた、まだあって一日もしていないのに。
何を答えるでもなく背中をゆっくり撫でてくれた。それがなににも代えがたい救済だったことに違いは無かったと思う。
その日に最後に見たのはうっすらと見えるこの人の顔と、月光を吸った縁側の奥ゆかしい鹿毛色だった。
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作者名:男主愛好家 x他1人 | 作成日時:2020年11月1日 13時