鬼が出るぞ ページ29
「暫く研究はお休みだそうです」
『へ?』
ついついマヌケな声がでる。いまなんと?
「データが溜まってきたからまとめたいと。三日間は自室に籠っているでしょうね」
『そう...ですか』
「伝言はこれだけです。せめてゆっくりと」
それだけ言って研究員の人は帰っていった。
『ゆっくりと、なんて言われても...あ、そうだ』
確か外出可だったよな。三日間か、ギリギリ妹には会いに行けない期間だな。
せめて近隣の土地勘を掴みに行くか。掴めたからって特に何もないが。
そうと決まれば、自室にした図書室に愛武器たちを取りに戻った。多少食料と雀の涙ほどのお金を持って外に出る。久しぶりの太陽は少し目に悪かったがそれ以外は特に何の弊害もなく、むしろそよ風が気持ちいいくらいだった。
あの施設は割と山の方に建っていたのは知っているが、ある程度離れた場所から見ると木々に隠れてしまって完全に見えなくなる。それを意図してあの場所に建てられているのだろうか。
まぁいいや。旅を急ごう。
色々頭に浮かんだあの施設の闇を振り払うように足を速めた。
♯
あれから一晩明け、一つ気づきが。呪いのお陰で夜間は全力疾走すると驚くほど速く走れることが判明。この様子なら蛍とリリィに会いに行けたじゃないか!この!とも思ったが、あの時の事を悔やんでも仕方がないし、諦めてこのまままっすぐ進む。
『ん?』
暫く歩くと向こうの方に小さく村が見えた。走って見に行くとそこは確かに村だが、あんまり活気がない?人がいないぞ。
そんな中一人青年を見つける。
『すみません。ここはなんと言う村でしょう?』
「そんなことは良いんだよ。それよりも気をつけろ、ここから先は鬼が出るからな」
『鬼?』
〇滅の刃って奴だろうか...
「なんでも死んでも死なないやつがいるようでね。あっちの方に幽閉されてたはずだよ。でも、見に行かない方がいい。かなり惨いことになってるかも知れん」
『そうですか、行ってみます』
「そうかそうか、え?行くのかい?...ち、忠告はしたからな!俺は知らないからな!!」
後ろ手に声を見送る。とりあえず指の刺された方に行けば会えるだろうと足を運ばせた。
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作者名:男主愛好家 x他1人 | 作成日時:2020年11月1日 13時