また戻ってきてしまった ページ27
「準備は出来ましたか?出来て無くとももう聞けませんが」
翌日、柴庭と率いる数人が俺の家に訪れた。
『もうやれることもないし、早く行こうぜ』
「そうだ、最後に二人の姿を見たいのですが...」
『だめだね』
「つれませんね」
わかっていた、と困ったように笑った。
「行きましょうか」
そう一言。前を向いて歩き出した。
♯
途中野宿も挟みながらあっという間に施設についてしまった。しかし、細身なくせにここまで息一つ乱さない柴庭は一体何なんだ?中身はガチムチなのか?
「そんなに見られてもただ恥ずかしいだけですよ」
『まるで思ってないことを平然と吐くな』
「あれ、そんなに信用されていませんか」
誰がするんだと心で悪態付きながら施設内へ入る。
昔の賑わいは一切なく、なんなら人っ子一人いなく、すべて研究用の部屋になってしまっている。
『もう子供はここにいないのか?』
「ええまぁ。もう
とことん怖気がしたが、これ以上悲しい犠牲が出ないならこっちの方がいいかと無理に理解した。
「普段はここのどこをうろついていても構いませんが、私が呼んだらすぐに来てください。ああっ、安心してくださいね。流石に今日は何もしませんよ。疲れているだろうし、こっちも十分に準備できていないので」
つまり明日からはバンバン呼ばれるのか。眉間を抑え思わずため息を漏らす。
「何かあったらそこらへんにうろうろしている研究員でも捕まえてください。貴方の言う事は聞くようにと言ってありますから」
『わかった』
「それでは今日はこれで」
コツコツ靴を鳴らして帰っていった。
♯
どこに行っていいかわからず、しばらくはかつて図書室だったろうこの部屋で過ごすことに決めた。
名残なのか何か知らないが依然と同じように本が並んでいる。少し増えたような気もするが...
しかし、できることが無いな。日記でも書いてみるか?そうだな、布団を貰うついでに紙と筆も頼んでみよう。
元図書室を出て研究員を探す。すると案外すぐそこにいた。
『すみません。布団と、あと紙と筆を頂けますか?』
「ええ。すぐに手配しますね」
少々走り気味にここから離れると布団を手に戻ってきた。
「布団はこれを。紙と筆ですが、今私が使っているものしか無く、それでもいいなら」
『わざわざありがとうございます』
ぺこりと頭を下げ図書室に戻る。いつの間にか夜になっていたので今日はもう寝ることにした。
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作者名:男主愛好家 x他1人 | 作成日時:2020年11月1日 13時