FIVE！6 〜 ARS 5shops story 〜

209 ページ3

吹く風は冷たいけれど 柔らかな日差しは ぽかぽかと暖かい

どこからか 沈丁花の香りが流れてきて
春が近くまで来ていることを 実感する

閉幕まで あとわずかとなった ある日の午前中
オレは 翔くんと一緒に 『大恐竜展』を満喫した

『タルボサウルス』と『サウロロフス』の実物全身骨格は圧巻の一言で
あまりの大きさに 翔くんもオレも 度肝を抜かれた

一部の恐竜の化石は全身骨格ではなく 脚や胴体だけの展示だったけど
それでも 充分 迫力が伝わってきて
正直 恐竜に たいして興味がなかったオレだけど
見終わった後は いっぱしの恐竜博士にでもなったような気分だった


―翔くんは 最初のあたりは
『うわ―』『マジすげ―』と つぶやきながら 見て回っていたけれど
そのうち どんどん真剣な顔になっていって
最後の方は 一言も喋らず じーっと 化石を眺めていた


オレと違って アタマの中で いろんなことを考えて
順序立てて 組み立てていくことが 得意な翔くん


『太古の昔に想いを寄せて 『地球の神秘』とか 『生物の進化』とか
小難しいことを考えて いるんだろうなぁ』


…なんて 思っていたら 急に 大きな目をぱっと輝かせて

『恐竜ってさ―

　美味しいのかね？
　柔らかくて脂肪が多い―って感じはしないじゃん？

　…ってコトは 筋っぽくて 肉質は固いのかな？
　
　馬とか？ 鹿とか？

　
　…そんな感じなのかなぁ？』

プロケラプトルの赤ちゃん15頭の集団化石を見つめながら
『恐竜の肉質』について 熱く持論を展開していた



『――あ？ よくわかんないけど 腹減った？
　そろそろ メシ 食いに行こうか？』


オレは オレには到底思いつかない
『そんなコト』を 真剣に考える翔くんが ダイスキだ

210→←208

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す