生きること ページ22
ー銀時サイドー
驚いた、のはいうまでもないのだが、事態をすぐに
飲み込めなかったのは、Aのあっけらかんとした態度と、言葉のギャップが激しすぎたからだ。
「ーーーは?」
「だから、好きなんだって。惚れてんの」
コップの中で、カラン、音を立てる氷。
フリーズ後数秒で、俺は事態を把握した。
「・・・それマジで言ってんのお前」
「こんなきもい冗談言わないって」
苦笑まじりの皮肉めいた言葉に、俺は悪態を
返すことができずにいた。Aの目の奥が、
ゆらゆらと揺れているようで。
「ーーーでも安心して。別に付き合って欲しいとか
坂田さんが私をどう思ってるか聞こうとか、そういうことじゃなくて、・・ただ伝えときたかったっていうか、モヤモヤ考えたくなかったからさ」
少し晴れたと思っていたこいつの影が、また少し
濃くなった気がする。ーーまた、本音や欲求を
抑え込んでいるという動かぬ証拠だ。
人がせっかく苦労して解きほぐしてやったってのに
いとも簡単に自分の殻にトンボ帰りだ。
全くもって許せることじゃねェ。
「いい加減にしやがれ。お前の建前は聞き飽きた。
ーーーで?本当はどうしたいんだよ」
苦しげに眉を寄せたAは、静かに俯いた。
「言わない」
「なんでだよ」
「だって私、今、最高にかっこ悪い」
「これ以上かっこ悪くなりたくない」と
続けたAが、自身の膝を抱えて丸くなった。
まるで、壁を作って侵入を防ぐように、
自らを包み込んでしまったのだ。
ーーーだが、実はその壁を壊してほしいと誰より
願っているのは、鹿地A自身だ。
その役目を、俺は担っている。いつの間にやら
そんな思いに駆られていた。
「っ、ちょ!?」
細い腕を掴み上げ、床に押し付ける。
髪が力なく床に広がり、そいつは目を丸くした。
泣き腫らしたように赤い目は、しっかりと俺を
捉えていた。
「な、何す___、」
「またうまいこと生きようとしてんな」
「・・は?」
「前に言ったよな。"うまく生きようとすんな"って。自分のこと押し込めて何になんの?
テメェにゃその生き方は向いてねーんだよ」
一見クールで冷静に見えても、
感情が動きやすい奴だってのはすぐにわかった。
そういう奴が全部を飲み込んで器用に生きようと
すれば、どこかで綻びが出るんだ。そんなことが
できるのは、一部の飛び抜けて要領のいい奴だけだ
110人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
シュシュ☆☆(プロフ) - 紫蘭さん» いつもありがとうございますっ!最後まで気長にお付き合いくださり、光栄の極みです!新作も出せるかと思いますので、また暇なときに足を運んでみてください! (2019年8月25日 8時) (レス) id: cae178a2c8 (このIDを非表示/違反報告)
シュシュ☆☆(プロフ) - 更紗さん» ありがとうございました!なんとか完結です…!ちぐはぐな部分もあったと思いますが、読んでくださり、ありがとうございました! (2019年8月25日 8時) (レス) id: cae178a2c8 (このIDを非表示/違反報告)
更紗 - 完結おめでとうございます!銀さんと夢主ちゃんの関係性が独特ながらとても素敵で、何度読み返しても飽きませんでした!更新本当にお疲れ様でした (2019年8月11日 18時) (レス) id: dd67e5be9c (このIDを非表示/違反報告)
紫蘭(プロフ) - シュシュ☆☆さん» 少し早いですが、続編おめでとうございます!! シュシュさんのペースで頑張ってください!! 私はいつでも暇なので笑笑 (2019年8月5日 14時) (レス) id: 6053f0b386 (このIDを非表示/違反報告)
シュシュ☆☆(プロフ) - 紫蘭さん» ありがとうございます!ようやく続編です…!気長に待ってくださり、本当に感謝です!少しずつですが、きちんと完結させたいと思います! (2019年8月4日 13時) (レス) id: cae178a2c8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:シュシュ☆☆ | 作者ホームページ:
作成日時:2019年3月31日 12時