【銀魂】難あり波もあり

本心から ページ9

あっさりバレてしまった。いやそれはもう呆気なく。下手にごまかしていたために、変な恥ずかしさみたいなものか残って。穴があったら入りたい。






「にしても、何で嘘なんてついたんだ」

「あはは・・」




相変わらず口いっぱいにケーキを頬張る銀さんの
調子は変わらない。せわしなく動く口を見ながら、
ひとまず私は苦笑を返す。

真っ赤な瞳がこちらに向けられて、「あっ」と
声をあげる彼に、ぴくりと震えた。





「まさか、怪しげな購入ルートから入手したとか
実は高度な印刷技術によって作られた偽チケットだったりすんのかよ」

「んなわけないですって！人聞きの悪いっ」



突拍子も無い嘘だ。疑われたらどうするんだ。
周りを素早く見渡してみたが、タイミングよく
店員さんは近くにいなかった。

思わずため息をついた私は、とりあえず気を落ち着かせようと、残りのケーキを一口。


甘さが広がり、なんだかさっきより
頭が冴え渡った気がした。糖分ってすごい。
確かにバカにできないかも。





「まあ、平凡なお前にそりゃ無理か」
「平凡は禁句です」

「でもよ、考えてみりゃおかしいんだよな
今日のお前は」

「・・え！？おかしい、ですか？」



今日はいつもよりちょっとお高いよそ行き用の
着物だし、お化粧も少々。

慌てて顔を触る。まさか、汗で化粧品が
浮いてきてるとか、間抜けなことが起きてるのか？
銀さんの前でそんな！！


一気に血の気が引いた私に、「ツラの話じゃねェ」
とのこと。ひとまず胸をなでおろす。






「今日だけじゃねーな。チケット渡しに来た時から
ずっとっつーか、・・いやそれ以前からか」

「え！？」




チケット渡しに行ったのってたった2日前じゃないか
ならばそれ以前とは一体いつから？

いつから他人に「おかしい」なんて言葉で
表されるような非凡な行動をとれるように
なっていたのだ。平凡でひねりのない発想しか
浮かばない私が。





「俺のことやけに褒めてみたり」

「嘘はついてませんて」

「突然変なこと抜かしてスイーツバイキングに
誘ってみたり」

「おかしいです？それ」

「急に化粧してみたり」

「え、ダメでした？」

「いやダメじゃねーけど」




私はいつも本心から言っている。
定食屋来店の際、みんなに冷やかされしぶしぶ
口にした褒め言葉だって本当のことだし、
変なこと抜かした覚えはないけど、今日は
チケットのこと以外嘘は言ってない。
化粧は気合い。

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