【銀魂】光に焦がる虫

現実か夢か ページ29

全貌は、こうだ。

水岡の手を狙ったらしいライターは見事的中。
銃を手放し、同時に私から離れたその隙に、
そいつを押さえ込んだ。

その手に手錠がかけられた時、ーーあぁ、助かったんだと、安堵した。


へたりと座り込んだ私は、ただぼんやりと、
事件の終結を見守っていて。









「・・立てるか」

「・・あぁ、ありがと」






次に我に返ったのは、十四郎が手を差し伸べてきた
その時であった。ーーこれは現実なのか。
はたまた幸せな夢なのか。恐る恐るその手を掴む。







(・・あ、)




伝わってくる体温は、間違いなくその人のもので。
強張っていたらしい体が緩んでいくのがわかる。
かすかに香ったタバコの匂いも、
彼が土方十四郎だと教えてくれた。







「・・久しぶりな気がするね」

「そうだな」





力強く、私の腕を引っ張ってくれた。
立ち上がって、顔を見上げれば、十四郎も、
私を見下ろし、ふわりと表情を緩めた。

外では、パトカーの音や人の怒声が響く。



いつのまにやら連行されたらしい水岡の姿は
消えていて、私たち二人きりとなった倉庫には、

久しぶりの時間が、静かに流れていた。







「ったく、・・店まで出向いてみりゃァ失踪中。
ホシ追い詰めたら人質。いい加減にしろよ」


「運命ってのは面白いもんだね」

「面白くねーな。おかげでヒヤヒヤしっぱなしだ」





十四郎の声がこだまする。
呆れと憤りと、それから少しの優しさと安堵。

私のことで、ヒヤヒヤしてくれてるんだ。
突き放そうとした私に、会いにきてくれてたんだ。









「ーーー私ね、水岡たちに殺されたっていいと
思ってた。・・それも運命さ。抗って外に逃げ出してこられただけでも私はよくやったってね」




でも、結局死ぬのは怖い。
諦めていたはずの人生が、思ったより楽しくて
綺麗だったから。







「ーーーあんたに、会いたかった」




それを教えてくれた彼を忘れることなんて
できるわけもなく。未練がましく引きずって。

挙句簪など送り込んで。・・やれやれ重い女だ。








「・・・もう振り切れたのか？」




物心ついたときから、私は裏だった。
光の届かない暗い闇の中で、いつしかもがくこと
すら諦めて。ただじっとうずくまっていた。

動かなければ迷うことはないし、
壁にぶち当たることもない。


でも、それが至極つまらないことだと知って。
それで、光に向かって逃げ出して____。









「ーーーー・・あぁ。多分ね」

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