【銀魂】光に焦がる虫

不自由？ ページ27

ー土方サイドー


かちゃり。銃がセットされたのがわかった。
そいつの腕の中で顔を伏せた女が一人。

頭に突きつけられた銃を前に固まっている。





暗闇の中、下手にこちらから仕掛けることも
できず。止むを得ず、俺は一旦刀を下ろした。







「人質たァ軟弱な野郎だ。手前ェの拳でやりあおう
とは思わねーのか」

「軟弱？違うね。私がこの手段を選んだのは、
最も効率的で効果的だからだ」





悪びれる様子もなく、そいつは開き直ったように
笑っていた。その割には据わったままの目が
狂気を表しているようで。

冷たい風が吹き込む倉庫の中。
水岡は、「しかしなぁ」と。






「警察もやるね。身を賭して犯人逮捕に努める」




何を突然言い出したのか、と。
眉をひそめた俺などお構いなしに、水岡は続けて
口を開いた。









「ーーーまさか、私の行きつけの遊郭に客として
潜入するなんてね。世間様にバレたら袋叩きだ」


「・・何のことだ」





何故それを知っている、なんて疑問は浮かばなかった。あの世界、情報ルートなど腐るほどある。

俺の顔が割れてても不思議ではないし、
うろついていたことがこいつの耳に入っても
特に不思議はない。







「・・随分長い間潜り込んでいたみたいじゃないか
さぞ遊女とも仲良くなったんだろうね」


「ゴタゴタうるせェ。いい加減その女ァ解放しろ」

「はいそーですか、って人質解放すると思う？」




どこまでも余裕を貫くそいつに、
イライラが募る。そんな俺を知ってか知らずか、
挑発するような発言が続く。









「・・・警察って正義なんだろ。私たちとは逆。
悪事を許さない？うん、心底かっこいいと思うよ。
さぞかし慈悲深く、気高いんだろうな。

でも、不自由だよなあ。なんたって正義は制限が
多すぎる。殺しちゃダメ、出来心もダメ。
人間って貪欲なものなのに、全部押し込めて潔白で
いなければならない。私なら、人質なんてさっさと
見捨てるのに」



「・・何が言いたい」
「この女のこと、知らないのか？」





俯いてじっと黙っている女を見やる。
・・知らないか、だと？









「その様子だと、あの警察のこと、
お前の方は知ってるみたいだな。



ーーーね？A」





聞こえた言葉に、呼吸が止まる。
ひゅ、と小さく喉の奥で音がした。

動悸が乱れ、冷や汗が流れた。



A、だと？




頑なに俯いていた女の顔が、
水岡によって晒された。

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