抑制剤 ページ2
ー土方サイドー
別料金を設定されてから約1ヶ月ほど。
暇を見つけては通っていた俺だが、
落とし前をつけるでもなく、何か妙案が思いつく
わけでもなく。ただ悪戯に時が流れていた。
このままではいけないとわかっていつつも、
穏やかな時間が続いていけばいいと思ってしまう。
「ーーいらっしゃい」
変化といえば、・・Aが、時折柔らかな表情を
見せるようになったことくれェだろうか。
「今日は寒い」
「雪が降ってるからな」
Aが俺のためにと用意していた酒は底をつき。
それがまた、時が流れたことを自覚させた。
「・・江戸はちっとも積もらないからいけないよ。
犬がホントに庭を駆け回るのか、少し興味が
あったんだけどね」
「そんなに興味があるようには見えねーが」
「あの歌、結構好きなんだよ」
雪やこんこあられやこんこ_____、
形のいい唇の間から小さく口ずさまれる歌を
聞くのは、ガキの頃以来だ。
確かにそんな歌詞だった気がするな、と
なんとなく記憶を辿る。
「でも、雪はすぐ溶けちまう。・・綺麗なものって
どうしてこう、寿命が短いんだろうね」
「だからこそ、綺麗だと感じるんだろ。
皮肉なことだがな」
その原理なら、Aも消えちまうんだろうか。
綺麗で繊細なこの女は、いつのまにやら俺の手の
隙間から溢れて、どこかにいっちまうんだろうか。
首の皮一枚繋がった俺たちの関係では、いつそんな
瞬間が訪れてもおかしくないのかもしれない。
「・・お兄さん」
「あぁ」
身を乗り出したAと、吐息が混ざりあう。
もはや恒例行事となったそれ。
ーーー触れるだけのキス。
だが、いつまでたっても慣れることはなく。
いつまでたっても、飽きることはない。
唇が離れたあと、一瞬垣間見えるそいつの切なげな
表情が変わることも、ない。
「まいどあり」
交わすたびに思い出す。
建前に塗り固められた行為。
こうして、嘘でコーティングしなければ、俺たちは
普通に触れ合うことさえできないという現実。
互いにやめることができねェこれは、
いまや、ーーー理性をストップさせる抑制剤。
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シュシュ☆☆(プロフ) - 燐さん» ありがとうございます!最後まで読んでくださり、感謝ですっ!! (2018年9月10日 21時) (レス) id: ad40a3ccd1 (このIDを非表示/違反報告)
燐 - 切ない感じからハッピーエンド、感動しました! (2018年9月8日 17時) (レス) id: 6e4e502025 (このIDを非表示/違反報告)
シュシュ☆☆(プロフ) - 蜜柑さん» ありがとうございます!無事完結でございます!そんなお褒めのお言葉をいただきまして、私も言葉にならない喜びに震えております…!読んでくださり、ありがとうございましたっ! (2018年1月26日 22時) (レス) id: a89349d530 (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - またコメ失礼します。完結おめでとうございます!今回も、なんか言葉にできないけどすばらしくすばらしかったです!!(語彙力が…)シュシュさんの小説大好きなので、これからも新作待ってます!ぜひともよろしくお願いします!! (2018年1月22日 21時) (レス) id: 6a812c0c50 (このIDを非表示/違反報告)
シュシュ☆☆(プロフ) - ミドリムシさん» ありがとうございます!シリアス、確かに多いですね!クールでかっこいいイメージがそうさせるのかも…?足を運んでくださり、本当に感謝です! (2018年1月22日 14時) (レス) id: a89349d530 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:シュシュ☆☆ | 作者ホームページ:
作成日時:2018年1月14日 12時