【銀魂】棘を包んだ花

父の常 ページ29

ー沖田サイドー


このむさ苦しい集団で、狭い座敷に押し込まれて
よく毎朝、ニコ中のお経なんざ聞くもんだ。
無遠慮にあくびを漏らした俺を、土方が睨みつけるのがわかったが、これまた毎朝のことだ。






「・・総悟、テメェちゃんとわかってんだろうな。
今回はお前にも関係することだぞ」

「わかってますよ。今年の目標は土方を亡き者に
することです」


「何の話だァァア！つか今年あと数日で終わる！」

「せいぜい余生を楽しんでくだせーよ」

「切腹しろ」





もちろん、来年の目標も土方を亡き者にすることだ






「ーーーで？幕府関係者の蔵ばかり狙う盗賊集団が
なんですって？」


「・・・ったく、聞いてんじゃねーか」





幕府にも位はある。
俺たちみたいな下位の貧乏幕臣はいざ知らず、
いわゆるボンボンエリート様。

最近俺たちの間で挙がる議題はもっぱらこれだ。
警戒を強めても止まない被害。上からも焦りが
見えており、早急な解決をと俺たちに件を
丸投げしたようだった。





「どうにも、負傷者が出たらしくてな」



こりゃエスカレートしてるぞ、と。
近藤さんは眉をひそめ唸る。





「手口としては、蔵を襲うことは変わらねーが、
屋敷のセキュリティかち割って侵入し、寝込みを
襲う。・・死者は今の所報告されてねェが」


「幕府への怨恨でしょうよ。んでも、人殺す度胸は
ねェときた。・・・ったく、くだらねェ私情のせい
で俺たちゃ時間外営業でさァ。どうせ夜動くことに
なるんですよねィ」

「テメェ普段から全然営業してねーだろうが！
警察には夜も昼もねーんだよ！」





とにもかくにも、今回は犯人が武装している可能性も高いと見えており、一番隊を主体に動く手筈だそうだった。




「んな面倒臭そうなツラしたところで、何も変わらねーぞぉ総悟！ほら、今回の事件、放っておけば
滝峰様のお屋敷だって危ねーんだ」




近藤さんのいう可能性に、何も行き着いていなかったわけではない。あいつの父親は官僚長だ。
政界をまとめる1人であり、重鎮。

狙われる可能性は十二分。・・実際、襲われた幕臣の家族が傷つけられる事例も中にはある。
つまるところは無差別なのだ。






「・・わかりやした」




早急に解決してしちまおう。
あいつがいつこちらに顔を出すとも限らねェんだ。





(ーーつか、こういう時こその護衛じゃねェのかィ)




使い時が違う。

政界のカリスマであっても、娘に対しては
ちと不器用なのが、父の常ってことか。

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