愛おしい ページ13
朝の身支度がおわり、女中たちはそそくさと部屋を出ていった。残された私は、小さな窓から覗く空を何気なく見上げていた。
机の上に積まれた見合い写真は、ついに3枚目を
重ねていた。
「・・・もう、一週間が経つのね」
真選組屯所を出てからの生活は、これまで何年と
繰り返してきたもののはずなのに、何とも味気なく
感じてしまう。
きらびやかな服も、今は重く動きにくい。
「ーーーAお嬢様、よろしいですか」
障子の向こうから聞こえるのは、
神経質そうな女の声だった。
あの間延びした気だるそうな声は、もう聞くことは
ないのかもしれない。
力なく返事をした私の様子なんて気にする様子は
なく、ただの業務連絡のようにツラツラと
言葉を連ねた女中からは愛情など感じられず。
ーー以前までは何とも思わなかったそれが、
今は虚しく簡素だ。
「お手紙が届いております。知らぬ男からのものだった故、一応中身を確認させていただきました」
「・・男？」
「ええ。ーーー"沖田総悟"とかいう」
「ッ、！？」
久々に聞いたその名に、心臓がひどく跳ね上がった
ひゅっと小さく息を吸い込んだ私は、女中の手から
その封筒を取り上げた。
受け取った封筒は、既に乱雑に端が切られており
裏には、確かに"沖田総悟"と。決して達筆とはいえぬが、幾度か見たことのある文字で綴られていた
(ーー沖田、)
きゅっと締め付けられた胸は苦しいのに、
嬉しくて、・・愛しくて。
私が開封できなかったことには不満は残るが、
今はそんなことを言っている時ではない。
薄い封筒から、中身を取り出した。
その手元を覗き込んだ女中は、眉をしかめ、
大げさともいえるため息をついた。
「・・なんとも汚らわしい。それはやはりゴミでは
ないのですか？」
「黙っててちょうだい」
「お嬢様・・？」
手が震えた。ゴミ？そんなはずはない。
ーーーこぶりな白い花。
正真正銘、数年前に目を奪われたそれだった。
「・・押し花、」
もう生きていないはずなのに、
その花はみずみずしく咲き誇っているようで。
まるで風に乗せれば、ふらりと甘い匂いが
漂ってきそうだった。
押し花なんて、あの男の柄ではないはずなのに。
・・小さな紙切れに添えられた一言は、いかにも
彼らしかった。
会いたくて、顔が見たくて。・・触れたくて。
ーーー"愛おしい"と、思った。
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シュシュ☆☆(プロフ) - ミズキさん» ありがとうございます！お忙しい中、こうして足を運んでいただけることが、本当に感謝でいっぱいです！楽しんでいただけていれば嬉しいです！ (2018年1月23日 18時) (
レス) id: a89349d530 (このIDを非表示/違反報告)
ミズキ - 完結からかなり時間が経ってしまい、失礼ながらコメントさせて頂きます。夢主ちゃん可愛かったです！初めて真撰組に来た時と比べて性格も成長し、沖田君とも無事結ばれ・・これからも二人のほのぼのとした幸せが続く事を願っています（笑）新作も頑張ってください！ (2018年1月23日 16時) (レス) id: d90ef8a117 (このIDを非表示/違反報告)
シュシュ☆☆(プロフ) - ピピコさん» ありがとうございますっ！ほのぼの系目指してたのでそういっていただけて嬉しいです！最後までお付き合いくださいまして、本当に感謝です！ (2018年1月7日 8時) (レス) id: a89349d530 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 少し遅くなりましたが、完結おめでとうございます！！なんといっても夢主ちゃんが可愛らしくて好きでした！沖田さんとの掛け合いにもほのぼのしました！素敵なお話をありがとうございます！お疲れ様でした！ (2018年1月6日 22時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
シュシュ☆☆(プロフ) - ナナさん» ありがとうございます！無事完結です！2018年、いいスタートを切れればと思います！2017年は、応援ありがとうございました！ (2018年1月5日 19時) (レス) id: a89349d530 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：シュシュ☆☆
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作成日時：2017年12月9日 23時
