【銀魂】不安定少女と鬼

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心地よい風が、店先に垂れ下がった風鈴を揺らす。平和すぎるこの街だが、警察からすれば、
表面上のものなのだろう。

その証拠に、今日も黒服を来て疲労の滲んだ
ツラを提げた男が、私の隣であんみつに
マヨネーズを絞っている。


時たま来店する土方は、毎度客のいないヒマな
時間帯を狙ってやってくる。つまり、今私は
そいつの隣に腰掛けてはいるが、決して仕事を
サボっているわけではなく、接客をしているわけだ。おぼんをかかえ、頬杖をついて駄弁って
いても、断じて接客だ。








「ーーじゃ、俺ァ行く」



「・・・あれ、今日早くね」

「仕事が立て込んでんだ」


「ふーん、あっそう？」




ごちそうさん、と一つ挨拶を落とし、
私に金を放った土方を店先まで追いかける。

今日はいつも以上に口数が少なかった。
また連続で徹夜を過ごしたのだろうか。


ポケットに手を突っ込み、ガラ悪く去っていく
そいつを見送って。マヨネーズまみれで残された皿を、ババアに手渡した。





「コラ！洗いもんくらい手伝えバカ女」

「手ェ荒らすのはババアの仕事だろーが。
ピチピチ美女に無理を強いるな」

「んだとテメェ！制服メイド仕様に
変えてやろうか！」

「あんたここをどういう店にしたいんだよ」




豪快な体型をしたババアは、青筋を浮かべながら皿を洗い始めた。私はその辺に腰掛けて
その背中を見つめていたのだが。






「ーーーで、あんたどうなってんだい」

「・・・？何が」


「さっきの兄ちゃんと。彼氏だろ」




時々来てるよね、と。

なんだなんだ。このババアいきなり若者と
恋話かよ気持ち悪い。





「・・・まあ、そうだけど」

「あんないい男がお前にあてがわれるなんて
神様も見る目がないよ」

「ふざけんな。あんな男に私があてがわれたと
いう奇跡に驚愕しろババア」




本当に嫌味しか言えないババアだ。
独り身だからってひがまないで欲しい。




「で、どこまで行ったんだい」



「・・・その質問の意味がわかんない」

「最近の若い奴ァ手が早いからねぇ」




どうやら、どこまで行ったのか、とは
私と土方の関係の進行具合の話らしい。





「Aがむしろ襲ってそうだね」

「そろそろ殺意わくよ」




健全なお付き合いをしておりマース、と
返せば、ババアは「はんっ」と嘲笑う。




「なら、キス止まりってところかい」

「それが何か？」





「ーーーそりゃあ、彼氏も大変だね」

「は？」

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