【銀魂】不安定少女と鬼

番外編1 ページ32

事件から、およそ3ヶ月がたった。
土方との仲も、最初は探り探りだったものが
少しは関係のかたちができてきたと思う。




「久々の休みだったのに、悪いねェ」

「・・悪いと思ってねーだろ、お前」


「あ、ばれた？」



私にはとても持ち上げられないダンボールを
軽々と運んできた土方は、それを床に置いて
私を睨みつけた。

いつもの黒服ではなく、楽な着流し姿。
今日は非番なのだとか。




「つか、元はと言えばあんたらのせいで私の家はなくなったんだし？新居への引越しくらい
手伝ってくれていいでしょーよ」


「俺が壊したわけじゃねーんだけど」

「上司は部下の尻拭いが仕事だろ
しっかりしろよ」

「そんな仕事を引き受けた覚えはねェ」





ということで、暇で暇で仕方ないであろう
そいつを呼び出した私は、ーーちょうど今日、
数ヶ月間お世話になった仮家のホテルを
旅だったのであった。引越し先が、決まったのである。もちろん、男手にはしっかり働いて
もらうつもりだ。




「あー、落ち着く」


「もっと広いとこあったろ」

「こんくらいがちょうどいいんだってば」




荷物運びに疲れた腰を一度伸ばし、部屋を
見渡した。ーーここは、特に広いわけではなく
綺麗なわけでもなく。けれどなんとなく、
前住んでいたアパートを匂わせる。

そんなところもここにきめた理由だ。





「ーーーで、仕事はどうだ。人並みに物事理解できてんのか」

「失礼なこと言ってる今？順調すぎるほど
順調だわ。めちゃくちゃはかどってるわ」




疑わしいな、とバカにしたように笑われたので
そいつの脛を蹴っておいた。






「つっ・・・！！！」

「バーカ。相変わらずたまに隙できるよね」




ちなみに仕事というのは、この家から程近いところにある甘味屋である。ゆったりと経営されるそこでは、少し柄の悪いババアが店主だ。

時給あまりに安いので、給料日のたびに
抗議している。・・まあ、あのクソババアが
私の意見など受け入れるわけないのだけれど。






「・・ったく、さっさと終わらせちまうぞ。
グダグダしてっと今日中に終わらねェ」


「え？できるとこまででいいけど」

「何言ってやがんだ。テメェが1人であれこれ
やって怪我すんのは目に見えてる」

「バカにしてるだろふざけんな」

「ばれたか」



「ッ、」



ふわりと笑った土方のさりげない優しさが、
ーーここ数ヶ月、・・むかつくことに、
時たま私の心臓を跳ねさせるのだ。

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