【銀魂】不安定少女と鬼

好意 ページ15

全てを話し終えたあと、土方は、呆れ交じりに
ため息をついた。





「言わんこっちゃねーな」

「私だって覚悟はしてた」




してた、けど、・・いざその状況に置かれれば









「ーーー怖くなったか」

「ッ、・・うぜー」




図星だ。私は怖かったのだ。
倉庫に隠れて震えていた。耐えきれなくなって
この男に助けを請うた。


再び膝に顔を埋めた。
倉庫の薄暗がりの中、私の今の顔を
見せたくなかったからかもしれない。

こいつが来て、心底安堵している表情など、
見せてたまるものか。


そんな私の隣に、そいつがそっと腰を下ろした
のがわかった。伝わってくる体温が、不覚にも
また安心をくれた。






「・・・ま、死に恐怖を感じるのは当たり前だ
別に恥じることでもねーだろ」


「うるさい」


「だが、俺の忠告を無視してこんな目にあってるってのァ、救いようねーけどな」


「・・・」

「反論もできなくなったか？」




おかしげに言葉を紡ぐ土方には、心底腹が
立つのだが、ーー確かに、反論できそうもない







「・・・あんた、ほんとバカだよね」

「あ？」


「私をこんなに気にかける人なんて、これまで
にいなかったから」




埃臭い中に、タバコの香が混ざる。
こんな狭場でふかすなんて、どんな神経してんだろうかこの男は。







「そりゃそうだろ。お前みてーな可愛げのねェ
女、気にする方がどうかしてる」


「じゃあ、土方はどうかしてるね」


「・・・・自覚済みだ」




だが今更やめる気もねェ、と。

ちらりと見た横顔が、真実を語っていた。
嘘などつく柄でもないだろうが、疑ってしまうところは、見逃してほしい。





(ーーーこんな状況だから、かな)




人間、弱っている時はつけこまれやすいものだ

変に素直になって、相手に身を任せてしまう。









「・・・おい、」

「しばらく、寝てないから」





だから、隣にある肩に頭を預けてしまったのも
きっと私が少なからず弱っているせいだ。

それをふりきらず、黙って委ねられているこの男も同様に、仕事で疲れているのかも。









「ーーー好き、だわ」




人に好意を持つのは、いつぶりか。
親にも、兄弟にも、会ったことはない。
好き、嫌い。そんな感情すら忘れ去っていた。

転げ落ちた言葉は、どうやら本心だ。


静かに目を閉じれば、すぐ意識は闇へと
誘われていった。

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