【銀魂】不安定少女と鬼

もう嫌だ ページ12

"どこいった！？"
"こっちに曲がったろ！？"



複数の怒鳴り声と足音。
人数を正確に把握することは難しそうだが

確かに言えることは、ここで堂々と
立ち向かっても、私に勝ち目などただの1％も
ないということ。


私の隠れた倉庫の前を行き来する足音は
一向に減る気配を見せない。









「ーーにしても、あんな若い娘が、あの地域で
何したってんだ」

「何でも、Nの情報をサツに売ったんだとか」

「はぁー、若気の至りにしちゃちとハイリスク
すぎる。・・だが軽率にんなことするかねェ」


「警察と思しき人物と密会してるところを見た
奴がいるらしい。少なからず繋がりがあるって
ことだ。そうなりゃ俺たちも危ねェからな」





雨音に混じり、会話が聞こえてきた。
とにかく俺たちは言われたことやっちまえば
それでいい、と付け加えた男たちは、捜索を
再開したらしい。





(・・・Nの差し金か)




言われたこと、とは何だろうか。
私を殺すことか、とっ捕まえてNの前に
連行することか。・・・どちらもごめんだ。

なんだよ、やっぱり無実じゃんか。
密会って十中八九、土方のことだと思うけど
別に情報を売ってたわけじゃない。どっちかと
いうと金を巻き上げてた。ふざけんな。




埃っぽい倉庫の中で、ため息をついた。
壁にもたれかけた体は、冷や汗と雨にまみれ、
着物が張り付いて、気持ち悪い。





「・・・、もう、嫌だ」




ーーー思えば、人生生きてきて得したことは
なかった。不自由など感じてなかったけれど
かといって、自由に幸せを感じていたわけでも
ないのだ。

そのおかげで、人との交わりは消え去り、
こんな時、助けてくれそうな奴もいない。








だから、・・何を見返るでもなく、私に手を
差し伸べた土方が気持ち悪かった。
善行なんて、一文の得にもならないことを
やってのけるそいつが。飽きることなく何度も
私に更生を促してきたそいつが。




ーーーそれでいて、新鮮だった。



嬉しかった、気がする。



まだ私を気にかけてくれる物好きもいるのだ。
意地張ってないで、素直に礼が言えれば、私は
もっとうまく生きられていたかもしれない。









．









『おいどうした、今忙し・・』
「傘、持ってきて。雨・・降って、きてさ」







ーーーー"助けて"









降り止まぬ雨、鳴り止まぬ足音。
その中で、いつの間にか取っていた携帯電話。

その奥で聞くそいつの苛立たしい声に、
ーーー・・気づけば私は、すがっていた。

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