【銀魂】不安定少女と鬼

気配 ページ11

雨の中、冷蔵庫は空っぽである。






「ーー致し方ない」



雨天の下に体を晒すという、何とも面倒で
億劫なことをやり遂げねばならぬときがきた。

これまでは何とかやってきたが、さすがにこうもお腹が唸っていては無視もできない。



重い腰を上げた私は、ビニール傘を手に、
扉を開けたのだった。









「・・・まだマシか」



先日の土砂降りに比べれば、まだ可愛らしい。
やはり傘で片手がふさがるというのは嫌悪の
対象でしかないが、ーーまあいい。コンビニは
すぐそこである。

信号を一つ越えて、右に曲がればすぐ・・・









「ーーー・・、何？」




後ろに感じた、"気配"
それが、マイナスの感情を含んでいること、
私に対して面倒な事態が起きようとしていることは、いち早く認識できた。

コソコソと姿を隠しているところをみるに、
やはりその感覚は正しいようだ。




雨の中、感じ取りにくい気配は
決して私の視界に"形"を見せることはなく。

探すことはひとまず諦め、人通りのよい道路に
出ることが最善だと考えた。コンビニは、
一度諦めよう。そうして方向を変えた。


ーーーのだが、






「・・・、ひっ、」




全速力で走り出そうとした私の背後、
気配が、ーーー動いた。


振り向けば、姿を現したらしき気配の正体。
私が走り出すだろうことを察知したそいつらは
大きな体をすばやく動かし、こちらとの距離を
詰め始めていた。


無我夢中で傘を投げ捨て、苦手な雨に体を
濡らしながら、足を動かした。
運動神経は悪くない。逃げ足だけは早いのだ。


つかまれそうになる体をひとえにかわし、
何とか角を曲がる。ーー追いつかれそうになる
またまた角を曲がる。その繰り返し。


水たまりに突っ込んだ足は、みるみるうちに
靴を濡らす。・・もう女の嗜みなど考えている
暇はなかった。まとわりつく着物の裾を
がばりと開ける。視界を遮る前髪を振り払い
曇天の下を駆け抜ける。

ヒューヒューと胸が酸素を求めだした頃に、
ようやく大通りが見えてきた。賑やかな人の声が聞こえる。





「ッ、・・まじかよっ」




だがしかし、ーー卑怯なことに、こいつらは
私を挟み撃ちにするつもりらしい。

大通りへ続く路地の出口を、先回りしたらしい
新たな刺客が塞いだのだ。



急ブレーキをかけた私は、咄嗟に近くの角を
曲がり、・・その先に見えた持ち主がいるとも
わからぬ倉庫へと逃げ込んだ。

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