【銀魂】願い続けて

考えてなかった ページ27

神楽ちゃんの湯呑みを押しのけるように机に広げられた新聞には、確かに見覚えのある男の顔が大きく取り上げられており、

"大スクープ！大手機械メーカー、若手社長の裏業が判明！"なんて大々的な見出しで
飾られていた。






「・・新聞の一面になってるじゃない」


「そりゃそうだろ。名の知れた企業の社長が
密輸容疑でしょっぴかれるなんざ。金持ちは
ロクなことしねェのな、本当」




写真にうつる悔しげな顔。いつもの、感情の読めない凍てついた笑みと落ち着きは消え去り、
歯を食いしばっているように見えた。

あんなに怖かった男が、ーーこうしてみると、
小者に見えてくる。それが何だか哀れで。



その男を深く知っているわけではなくとも、
何だか、ひどく切なくなった。






「ーーーA、大丈夫か？」


「うん。でも何か信じられないよ。あの峯田が
警察に捕まっちゃうなんて」

「完璧な人間ほど、繊細なところに気を配り
くだらぬところでミスをするものだ」





ちらりと見上げた小太郎の顔からは、一体
どんな気持ちでその記事を見つめているのか、
読み取ることは不可能であったが、

とにかく、ーーーこれで全てが終わったのだ。







「これで、晴れて婚約破棄が成立するのね」

「そうだな」




本来ならば今日が挙式の日であったが、
いまだ婚姻届に判を押していなかったのだから
事実上、自然消滅という形になるか。






「ーーーつーことは、依頼達成っつーことで
いいか、客」


「・・・あぁ。世話になった」


「一時はどうなることかと思いましたけど」

「本当アル。面倒ごとはお断りネ」





「ーーー・・ありがとうございました」




ひとまず、深々とお辞儀をする。

テキパキとやってくれたわけではなかったけど
銀さん達には大変お世話になった。
それに、久々に、こんなにワイワイ時間を
過ごせてすごく楽しかったわけだし。







「・・・で、これからどうすんだ」


「ーーーあ、」




考えて、なかった。

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