【銀魂】時には時間を忘れて過ごすべし

厄介だ ページ10

ー沖田サイドー


ーーやばい、と思った。
まさか、鋭そうにみえて実は鈍感の塊である
この女に、勘付かれてしまったのか、と。

・・が、どうやらそういうわけではないらしい





「・・・どういう意味かさっぱりだな」




俺がいなければ面倒ごとが減る。スケジュールがスムーズに進む。ーーそんな答えは想定内。
・・の、はずだったのだが。

こいつは、"寂しい"と口にした。


ーーー何かに期待することなんざねェはずの
俺が、一瞬無意識に抱いてしまったそれ。






「・・・わかんないの？鈍感？」

「俺の感性の問題じゃねェ。お前ェの語彙力の
問題だろィ」

「後で吊るすからお前」





熟れたトマトのように真っ赤に染まったAの顔に、またしても大きくなる期待。






(ーーあぁ、厄介だ)



期待とは、厄介で、面倒くさい。
恋心なんつークサェものも含めて。

そんなもんを抱いてしまうほどには、
俺もこいつに入れ込んじまってるということ
なんだろうが。






「私だって、こっちだけが思ってるなんて
ムカつくし？だから、ほら・・あれ！」





幸運にも、俺の表情は1ミリも崩れていない。
そいつがコロコロと変える中、顔だけは
余裕を、貫いていた。ーーのだが、








「じゃあつまり、
ーーー・・お前ェは俺に、惚れてんのか」





もっと焦らせよ、恥ずかしがらせろよ、と。
俺の中のサド心が囁いた。

結果をせかすなんざ、・・早く知りてーと思う
なんざ、俺らしくねェ、と。







(・・やっぱ、厄介だ)






黙っている、ーーというより、ひたすらに口を
パクパクと開閉しているそいつに、せめてもの
余裕を見せるため、口角をさらに釣り上げた。





「お前、俺といるとよくスケジュール狂うよな
・・一緒にいるのがそんなに楽しいかィ？

ーーー大好きな時間のことも忘れちまう程に」



「ッ、なっ、ちょ、・・は！？」




最初に言い出したのはAの方であるのに
何という狼狽えっぷりだろうか。

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