【銀魂】恋い者

遠足前夜 ページ2

朝、ーーいつもならば隣でいまだ寝息を
立てているはずのそいつが、今日はいなかった

隣の温もりすら感じないということは、
よほど早く起きたのか、それとも寝てないのか







「・・神威？」




ぽつりと呼んで、部屋を見渡す。・・が、反応
はない。つまりここにはいないということだ。



それに納得して、私は布団から這い出て。
着替えを手に取りながら、ため息をついた。

そのため息は私一人の一室の中で
あっけなく消えていく。









(・・・なんか、静かだな)





吉原時代には当たり前だったはずの一人の朝を
ーーーいつの間にやら、物足りなく
感じるようになっていた。






「私も、バカになったもんだね」




どれもこれも、結果的にすべて、神威の影響だ


ーーなぜか、その結論に嫌悪は感じなくて。
ふっ、と。自分でも驚くほどの柔らかい笑みが
漏れた。







「ッ、・・何考えてんだか」




ほんっと、柄じゃない。これはだめだ。

着替えを終えて、１度気合をいれるように
自分の頬を叩いたところで、ーーガチャリ。
部屋の扉が開いた。







「ーーーあ、起きてたのか」

「お、おはよう」





笑みを浮かべ、柔らかな口調で喋るそいつ。

一見落ち着いているようだが、やはり
・・どこか高揚を抑えきれない様子が伺えた









「今から降りるから」

「あ、うん」


「今日は休ンでてもいいヨ」

「そう」





一言二言、いつもより口数の少ない
会話を交わして。

「じゃあネ」と踵を返した神威の後ろ姿を
無言のまま見送ったのだった。









ーーーーー
ーー


ーーー場所は変わって、阿伏兎さんの部屋。

こんこん、と小さなノックを数回打ったところで、その人は顔を出した。






「・・・どうかしたか」

「神威の様子がおかしいんだけど」





挨拶など無用とばかり単刀直入に聞けば
その人は呆れた様子で頭をかいた。






「いつものことだ。きにするな」

「いや調子狂うんだって。何か気まずいってか
怖いんだって助けて！」


「いつものことだ」
「そればっかり！！」




しかもいつものことってどういうこと？

あの人他の星に降りるたびに
あんな雰囲気変わるの？







「あいつ、どうにも楽しみにしてるみたいだけども、・・一体何の仕事なんです」




高揚した様子や、
どこかを見据えるギラついた目。

あれは、どこか遠足前夜の子供のような。




見据えたところにいたおっさんは、
次に困ったように眉を下げて。

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