【赤髪の白雪姫】紅く色づく銀世界

#35 私の全て ページ36

ｰｰｰ数年前 ウィスタル城 薬室ｰｰｰ


卯の花病の治療薬を内服し、経過観察も終えた私。


『ガラクさん、ここまで本当にありがとうございました』

ガ「いえ、とんでもございません。
ご回復なされて良かったです。

それより、A様。これからどうなさるのですか？」



これから......。

ティリアス島を出た時から、ふとした瞬間に考えていた。
私はこれからどうすればいいのだろう、と。

身寄りの人なんていないし、帰る場所がないのだ。

ただ、Aにはずっと心に決めた事があった。
それは、母と約束した事。「立派な薬剤師になること」

だから 私はある事を懇願した。



『その事なのですが...ガラクさん。どうか私を
薬剤師見習いとして傍に置いて頂けませんか？』


ガ「！！...私は、構いませんが...
イザナ殿下が何と仰るか...あの御方にも話してみないと
正式な結論は出せません」


『そうですか...』


イ「良いぞ」



声のした方を見ると、ドアに体重をかけて立つイザナ殿下が居た。



(いつの間に...神出鬼没すぎる)



『......イザナ殿下。改めてお願いがあります。

私にはひとつ、お母様のような"立派な薬剤師になる"
という明確な目標があり、

行く宛ても帰る場所もない私には 今、
その望む道を追いかける事が全てです。

図々しい申し出であるのは十分承知の上なのですが、

この環境で、ガラクさんの下で 薬剤師になれるよう
勉強させて頂くことは可能でしょうか』






イ「顔を上げなさい、A。

貴方の申し出を受けよう。
今日から貴方を宮廷付き薬剤師見習いとして城に置く。

この者は優秀な薬剤師だからな。
貴方自身のためによく学べ」


『...っ！ありがとうございます！！』



こうして、私はガラクさんの指導の下
ウィスタル城の宮廷付き薬剤師見習いとして薬学の勉強をすることになったのだ。

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