09 傘は飾るもの ページ12
『ってことでした』
「へえ、きっかけ若利だったんだな。白布のほうかと思った」
『入学式牛島さん寮にバッグ忘れて戻ってたんだってウケますね。あ、最終決断のきっかけはもちろん白布ですよ。』
「ははっ、じゃあ白布目当てか」
いつもみたいに冗談を言ってやる。いつもみたいに面白い反応が返ってくることを期待して。
『…その言い方、なんか嫌です』
「え、あ、悪い、そういうつもりじゃ…」
怒らせちまったか…?
『いやいいんです嘘ではないんで!でもだから、それをカバーするために、みんなの足を引っ張らないように、本当にマネージャーやりたくてやってるような人の何倍も頑張らなきゃいけないんです私。今じゃ仕事楽しいですし、みんなのことも大事な仲間だと思ってますよ、何がどうなってこうなるか人生って分かんないものですね』
一通りしゃべり終わると、Aは我に返ったかのように慌てふためく。
『な、なに言ってんだ私!キャラじゃないですねどーぞ笑ってください!』
「笑わねえよお前頑張ってんの知ってるし。お前のそういう真っ直ぐなとこ、なんつーか…好きだぞ、俺は」
『えへへ、ありがとーございまーす』
冗談だと思ったようで、全然気持ちがこもってない。まあ嬉しそうだからいいか。
『で結局その傘、まだ返せてないんですよね』
「え、もう一年以上経ってるだろ」
『何かタイミングが掴めなくて…だから決めたんです!返すのは恋が叶ったときか諦めた時。まあ卒業までには返しますけどね。今は部屋に飾ってありますから!』
「飾って…??」
俺はこいつの恋愛相談を、べつに嫌々聞いてやってるわけでもなければ、好き好んで聞いているわけでもない。
白布のことを話すAは嬉しそうで、そんな顔を見れると俺も嬉しい。でも、こいつにこんな表情をさせる白布が少し羨ましい。
俺は多分、Aのことが好きだ。
けど、こいつが俺のことを好きになることはない。ずっと一途に、白布を思い続けるだろう。
一緒にいて飽きないし、いっぱい笑っていっぱい食うとこも好きだけど、何よりその真っ直ぐさに俺は惹かれたんだと思う。だから先輩として、最後までAの恋を応援してやりたい。
だけどやっぱり俺の気持ちもちゃんと伝えたいって気持ちもどこかにあって。言っても困らせるだけなのは分かってるんだけど。
まあ、こうして今となりを歩いてるんだから、このままなのも悪くねえかなって。
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作者名:Blue Leaf x他2人 | 作成日時:2017年1月28日 9時