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胡蝶様から帰宅の許可が下りたのは、
私が目を覚ましてから、ひと月が経った頃だった。
これ以上ないほど頭を下げ、心の底からありったけの感謝を伝える私に、
そう思うならばもう無茶はするなとクギを刺された。
肝に銘じます。
蝶屋敷の門をくぐり、一歩踏み出した先。
久方ぶりに視界に映った羽織に、思わず唇を噛んだ。
「……師範、」
「…………」
「…遅くなって、ごめんなさい、」
「…………帰るぞ」
はい。帰ります。会いたかったです。
迎えに来てくれたんですね、
決して口には出来ないけれど、師範の優しさが身に染みた。
私が眠ってる間、何度か会いに来てくれていたのだと、
胡蝶様から聞いていた。
心配をかけてしまったと申し訳なく思うと同時に、
…同じくらい、嬉しかった。
師範との約束を違えずに済んで、本当によかった。
「……胡蝶から話は聞いている。…もう身体はいいのか」
「はい!たくさん寝たので元気いっぱいです!」
「…そうか」
「本当に…ご心配をおかけしました」
「破門にするいい機会だったんだがな」
「生きてて本当によかった!!!!!!」
冗談だ、と表情ひとつ変えずに言い放つ師範。
絶対本気だった。
だが、師範にそう思われても仕方がない。
今回の事で、改めて己の不甲斐なさを痛感した。
少しは強くなった気でいた。驕っていた。
自己嫌悪に浸っている場合では無いと分かっていても、
学習しない自分が許せない。
「不甲斐ない継子で申し訳ありません、今まで以上に精進します…!」
「煉獄と想いを通わせたそうだな」
「はい!…………はい?」
流れるように返事をしてしまった。
何故、
なぜ師範がそれを…?
「毎日お前を嫁に寄越せと言ってくる。鬱陶しいからやめさせてくれ」
「……ちょっと何言ってるか分からないです」
「煉獄に嫁ぐのに何故俺の許可が必要なんだ?」
「あの、師範、一体何の話を」
「俺の継子だからという理由なら、やはり破門に」
「すぐどうにかします!!!!」
私の答えに、大きく頷いた師範。
まだ情報を処理しきれていないが、破門の危機だ。
あの日以来、まともに顔を合わせられていないあの人へ、慌てて鴉を飛ばした。
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まゆ - 無理のないように頑張って下さい!ユリアさんのファンになりました٩(๑>∀<๑)۶ (2月4日 9時) (レス) @page19 id: 311499c733 (このIDを非表示/違反報告)
ユリア(プロフ) - まゆさん» うわーーんコメントありがとうございます( ; ; )ドキドキ!嬉しいです!頑張ります(*´˘`*)♡ (2月3日 22時) (レス) id: bb66615edf (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - とても素敵なお話です!読んでいるとすごくドキドキしました♡続きが気になります!更新を楽しみにしてます⸜( •⌄• )⸝ (2月3日 15時) (レス) @page16 id: 311499c733 (このIDを非表示/違反報告)
ユリア(プロフ) - にこさん» ( ᴗ͈ ᴗ͈)” 勢いのまま完結まで書き切りたいと思います(*˙˘˙*) (1月23日 1時) (レス) id: bb66615edf (このIDを非表示/違反報告)
ユリア(プロフ) - さやさん» (*´˘`*)♡ (1月23日 1時) (レス) id: bb66615edf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユリア | 作成日時:2024年1月21日 14時