あなたはいつだって〈煉獄杏寿郎〉

43 ページ43

.





土曜日。



朝からお世話になった先生方に挨拶をして周り、

実習のまとめとして、大学に出すレポートを冨岡先生に確認してもらった。


相変わらずの無表情だったけれど、

よく書けてる、と褒めてもらえた。嬉しい。





「…今日で終わりか」

「はい、…冨岡先生の下で学べて、本当によかったです。ありがとうございました、！」

「……お前ならいい教師になれる」

「！…冨岡先生にそう言ってもらえるなら、私も自信が湧きます！」

「……そうか」





何だか和やかな雰囲気だ。

少しは冨岡先生とも打ち解けられたのかな、



今夜は派手にパーッと打ち上げでもどうだと、

宇髄先生が声を掛けてくれたけれど


今晩は杏寿郎さんと約束がある事を伝えると、

ニヤリと笑って、手を振りながら去って行った。
…何だか恥ずかしい。





「もうしばらくバイトは続けるので、また皆さんで来て下さいね」

「…ああ」

「それでは…お世話になりました！」





勢いよく頭を下げる。


元気でねー、

ちゃんと勉強しろよォ、と

先生方からの激励に、また嬉しくなって。


名残惜しくも、職員室を後にした。







今日は15時に杏寿郎さんがうちに来ることになっている。


…その前に、やるべきことがある。


パンッ、と自分の頬を叩き、意を決して足を進める。

西条先生を探さなくては。



ちゃんと、言わなきゃ。

また杏寿郎さんに、心配を掛けるような事にはならないようにしなきゃ。



西条先生が、私に対して好意を抱いてくれてるなら、

気持ちには応えられない事をちゃんと伝えなくては。





「そんなに難しい顔して、どうかしたの？」

「っ…！さ、いじょう…先生、」

「俺を探してたんでしょ？」

「…はい」





背後から掛けられた声に、思わず身体が震えた。


…やっぱり、目が笑ってない。



場所を変えようか、と自然に手を握られそうになり、

慌てて後ずさった。





「…誰もいないので、ここで構いません。…すぐ終わります」

「…そう？」

「私はあなたとプライベートで会うつもりはありません。…すみませんが、もう会うことはありません」





失礼します、

そう口早に伝え、その場を去ろうと試みる。


その腕を、掴まれる。

ギリッ…と、掴まれた腕が軋んだ。







.

44☆→←42

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す