チュートリアル ページ1
「おい見たかサイトウちゃんのレアリーグカード」
「みたみた。素敵な笑顔だよな〜」
「なに脳天気なこと言ってんだよあのサイトウちゃんが笑顔を見せるんだぞ!? よく見なくても目の前に誰かいるのがわかるだろ!」
「お、おう。いるな」
「サイトウちゃんはこれまで一度も笑顔を見せたことがないんだよ。手持ちが一匹のギリギリで勝ったときでも笑わない、なんというか、勝手に結論づけるのも申し訳ないけどストイックな人なんだよ」
「……確かに」
「そんなサイトウちゃんが」
「笑顔を見せる相手……? 両親のどっちかとか」
「お前リーグカードの裏読んでないだろ。『家族か、相棒のポケモンか、それとも他の誰だろうか』って書かれりゃ両親じゃないだろうしポケモン相手でもないんだよ」
「……彼氏じゃね」
「だよなあやっぱそうだよなあサイトウちゃんかわいいもんなあそりゃ彼氏の一人いるよなあ……くそ……なんでだ……」
「親友とか」
「いやあれは彼氏だよ……笑うんだぜサイトウちゃんがよ……もうそりゃ彼氏にきまってらぁ……」
「ガチ凹みじゃん」
「サイトウちゃん……」
♢
『だってよサイトウちゃん』
「外で名前呼ばないでくださいバレます。……私はあれ嫌っていいましたもん。オニオンくんが勝手に……」
ぱくぱく。もぐもぐ。ごくん。
口に入れたショートケーキをしっかりと飲み込んでから、目の前に座る少女は言う。
名をサイトウ。ガラル地方においてかくとうタイプのジムリーダーを務める少女で、今は普段つけているリボンを外し帽子をかぶり伊達眼鏡をかける変装スタイルで、ケーキにフォークを刺していた。
『いい笑顔じゃん。オニオンくんに今度お礼言おうかな』
「私は恥ずかしいです……」
『いやでもサイトウの貴重な笑顔を知ってるのが俺だけじゃなくなったってことか……。なんかやだねえ』
リーグカードから顔を上げたらサイトウと目があった。
すぐにサイトウはケーキに視線を落とす。
「……リンドウさん、そういうとこです」
落ちていった言葉を聞き取りはしたけど、そういうとこがなんなのかわからなかった。
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作者名:無名 | 作成日時:2019年12月3日 4時