歌い手病院『市立海の街病院小児科病棟』 (ページ33)

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ーろんsideー

何日たっただろう・・・

街から出るのが嫌で、泊まったホテルから夜中逃げ出してきた。

大分遠いところだったらしく、三日三晩歩いている。

足がもう悲鳴を上げていた。

私はわかってしまった。母さんが、父さんと虎太郎を殺したことを。

それもつい最近。

だから母さんは私を呼び戻したのだ。

次の【生贄】になるのは私だ。

犬「・・・！ろんちゃん？！」

ろ「コゲ君・・・っ！！！」

疲労のあまり倒れてしまった。

ー歌詞太郎sideー

目を覚ますと、いくらか身体が楽になっていた。

そ「ろんが１３ｋｍの道を歩いて帰って来た。今は、はしやんがいるから。」

１３ｋｍ・・・

大の大人でも１３ｋｍは大変だ。

そんな道のりをろんちゃんは・・・

歌「ろん！！！」

ろ「かし・・・せんせ・・・」

歌「疲れただろ？偉かったな・・・」

ろ「かし・・・たろぉ・・・こわかったよ・・・」

泣き出すろんちゃんをなだめ、話をきく。

ろ「わたしね・・・死ぬってわかったの。あのまま母さんのとこにはいれないって・・・」

ろ「それでね？持つものはもって逃げてきた。」

ろ「途中、駅とかバス停で休んだから、３日くらいかかっちゃった・・・」

ろ「でもね？かしたろのこと、考えたら頑張ろうって思えた。」

歌「ろんちゃん。おかえり。もうこんな思いはさせない。させないから。」

僕の胸の中に小さく収まるろんちゃんを見て、嬉しくなった。

自分で判断して帰って来てくれたことが本当にうれしかった。

今日も、海の街の小児科は晴天です。