歌い手病院『市立海の街病院小児科病棟』 (ページ16)

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ーうらたぬきsideー

俺は、患者の資料をまとめていた。

海の美しい街と呼ばれる海の街にポツンと立っているこの病院。
小さい故に、患者もアケビたちしかいないのだ。

今日は、特に何もないな。

坂「うらさん！急病や！準備せぇ！」

息を切らしながら俺の視界に飛び込んできた坂田。

浦「落ち着け、坂田！ちゃんと教えてくれ。」

坂「えぇと・・・諏訪村志麻、高校１年の１６歳と仙河蘭、同じく高校１年の１６歳。今日の１２：００ごろ、屋上で貧血状態で発見。お互い、手首に無数の切り傷とカッターナイフ。命に別状はないらしいが、精神的にやられてた可能性が大。というか、限りなく１００％に近い１００％。」

歌「坂田、うらさん！到着しました！」

歌詞太郎に呼ばれ、処置室に入る。血は止まっているものの、顔色は悪い。

二人一気には無理だから、仙河くんを任せて諏訪村くんの手当てにあたる。

浦「僕の声聞こえる？聞こえてるんだったら、自分の名前、言ってごらん！」

志「諏訪・・・村・・・志麻・・・です」

浦「志麻君、今から傷口、縫っちゃうからね。」

麻酔をかけて、素早く縫っていく。なにがあったかは後で聞こう。

坂田も縫い終わり、病室には運ぶ。

ひとまず学校側に聞いてみよう。

浦「もしもし、海の街病院、高橋といいます。本日運ばれてきた諏訪村君と仙河君の事なんですけどお話を聞かせてもらってもいいですか？」

学「そのことでしたら、後に説明しますから・・・」

浦「後にって・・・早急に知りたいのですが・・・」

坂「電話変わりました、坂田です。過去にそちらの学校の生徒さんでいじめに会い死亡したのを覚えていますか？その時も、後に、後に・・・って言って間に合わなかったんですよ！」

いきなり、電話をとられたから何するのかと思ったら・・・

坂田、すっげぇ怒ってんな。

学「こんにちは、担任です。明日、そちらに伺いますので。それでよろしいでしょうか。」

坂「はい、お待ちしております。」

電話を終えた坂田が一つ、ため息を落とす。

あ「せんせー！お願いがあんだけどー！」

この重い空気を割いてアケビが入って来た。

天「どうしたの？あ、ちょっと席、はずしますね？」