何も返せなかった 宜野座視点 ページ13
───────仕事が終わった後、俺は部屋に戻って一人、酒を飲んでいた。監視官時代では口にしなかったが、執行官になってからはこうやってたまに飲んでいる。親父や狡噛ほど酒に強い訳では無いが……。
(……Aが居れば、前みたいに飲まないか?と誘ったんだがな)
行方不明となった瀬戸塚A執行官。
前は縢のドミネーターが見つかったが、今回は見つかっていない。
(土岐園監視官の話によれば、Aとの連絡も通信も途中で途絶えたらしいな。Aが騒ぎのどさくさに紛れて逃亡したという奴もいるが、そんなわけが無い。アイツは、そんな事しない……!縢だって同じだ)
「そう言えば、常守監視官が局長の元に行ったあと険しい表情を浮かべていたな。聞いても、はぐらかされたが」
何かがおかしい。それは常守監視官も気付いているのだろう。
酒の入ったロックグラスを片手に、向かいのソファーを静かに見つめる。
『はい。洋酒入りバレンタインチョコ。口に合うか分からないけどやるよ』
『毎年毎年懲りずによくやるな』
『料理するのはそれなりに好きだからな。スイーツ作りも例外じゃない。ちょっとした息抜きさ。あと、この時期が近づく度にギノが昔、佐々山からのデマ情報でいっぱいくわされたの思い出して……くくっ』
※詳しくは漫画原作で。
『っ……いい加減忘れろ』
『あん時のギノは可愛かったなあー』
『何だと?』
『今のお前さんは……角が取れて丸くなったな。前よりも更に大人の貫禄出てきたんじゃないか?』
『どういう意味だ。酔っ払ってるなら切り上げるぞ』
『まさか。素面だっての。……もし出来るなら、狡噛やお前と三人で飲んでみたかったな』
『……そうだな。生きてれば、きっと……』
いつの日かの会話。
Aが消えて数ヶ月が経ったが、手掛かりになりそうな情報はほとんど無い。新しい情報も。
「くそっ……」
縢と同様、このまま見つからなかったら?
もし、何処かで既に死んでいたら?
縢も、狡噛も、親父も、青柳も、Aも……周りから大事な人間が消えていく。
(Aの捜索は四係が担当しているが、このまま見つからなければ打ち切られる可能性が高い。もし、まだ希望があるなら……アイツが生きてるなら……)
「また一緒に酒でも飲んで、“今までの分”ちゃんと返さないとな」
10人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
イマツギ(プロフ) - 続きが楽しみです。お時間があれば更新頑張ってください! (2022年3月12日 12時) (レス) @page34 id: f5ff06f155 (このIDを非表示/違反報告)
紅 - 面白い!更新頑張って下さい! (2020年4月10日 13時) (レス) id: ceacd95bed (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:遙 | 作成日時:2016年2月6日 20時