第七十話 ページ26
*煉獄杏寿郎side
身体が…冷たくなっていく
本来なら真っ白な羽織も、今は赤黒く…紫陽花が吸っているかのようだ。
上弦と戦ったせいで、綺麗な肌に傷が数え切れないほど出来て
麻友を抱える俺の手は、未だ流れるそれによって赤く染っていく。
杏「何故君がこんな…」
本当は俺が守るべきだったんだ。
なのに…何故…
麻友の美しい刀を、上弦がこちらに向かって投げ飛ばしてきた時は正直危なかった。
突然のことに身体が反応しなかったからだ。
しかし、強く後方へと突き飛ばされ…ふわりと雨の匂いに混じった血の匂いが俺の鼻をかすめていた。
恐る恐る視線をズラせば、両手を広げたまま動かない麻友の姿。
嫌な音を立てて脈打つ心臓。
速くなる呼吸。
何かの間違いだと、震える声で麻友に声をかけたが…羽織がじわじわと赤く染まり始め、現実なのだと思い知らされた。
地面に滴る赤黒い液体。
叫ぶな竈門少年。
たったこれだけでも、俺を絶望させるのには十分だった。
いつもの結いが解け、絹のような美しい髪がサラリと落ちていく。
『ゴフッ……れ"…んごく…ッ……無事、か…?』
自分の事など気にもせず、無理やり身体を動かして俺の方を向く。
杏「ッッ…!!!」
額や口から血を流し、そしてしっかり胸に刺さっている麻友の刀。
声にならない叫びを上げそうになった。
そんな俺を心配したのだろう。既に力の入らない足を動かし俺に近づこうとした。
まぁ、無理だろうな。
案の定、俺の目の前で崩れ落ちた。
抱きとめて俺が名前を叫べば、無理に笑う。
やめてくれ
そんなこれで最後だと言いたげな顔は
そんなこと、許すわけないだろう。
上弦を斬り刻むために、麻友をなるべく被害のない場所へと移動させたのだが、あの麻友が言うことを聞くはずがなかった。
胸部から刀を抜き、羽織で簡易的な止血をする。
そして、お互いに奥義を用いて戦ったが、結局逃げられてしまった。
全てが終わったあと、俺たちは寄り添っていた。
麻友の口から空気の漏れる音が聞こえてきて…目頭が熱くなる。
その一方で、泣きながら俺たちへの思いやらを泣き叫ぶ竈門少年には、思わず笑みが零れてしまったがな。
そんな彼らを見送り、隣に立つ麻友の方を向いたその瞬間
後方へと倒れていく麻友の身体。
何とか抱きとめたが、もう何もかも限界だったようだ。
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真季 - 続編おめでとうございます。引き続き楽しみにお待ちしてます。 (2021年10月7日 23時) (レス) id: ac0ba7e69a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かふぇらて | 作成日時:2021年10月7日 22時