第三十六話 ページ38
*
朝か…
寝ずに日を越したのは初めてだ。
結局、煉獄は現れなかった。
『…雨は降ってない…、大丈夫だ、きっと…』
鞘を握り、深呼吸をする。
その時、カタッと廊下で物音がした。
『ッ…!何者だ。』
何時でも刀を抜ける体制をとり、廊下を睨む。
颯「驚かせてしまって申し訳ございません。颯太郎です。」
覇気のないこの話し方、喜怒川で間違いない。
少しだけ警戒を解き、襖を開けた。
『何の用だ。』
颯「おはようございます。稽古をつけて頂きたくて参りました」
そう言えば継子を志願していたのだったな。
『分かった。庭に出で待っていてくれ』
手頃な木刀を二本手に取り私も庭へ出る。
『かかってこい。』
喜怒川に木刀を渡し、構える。
颯「では、遠慮なく…っ!」
『…ほう。』
動きも良い、型も様になっているし、そして何より速い。
継子としては申し分ないが…
意識が別のところにあるように見える。
敵に集中している時は、相手の動きを見て瞬時に判断しなければならない。
しかし…こいつの場合は…
颯「ふふっ…」
『…ッ……』
私の顔だけを見つめて笑っている。
気味が悪い。
思わず顔を歪めてしまう。
颯「そのような表情をされるんですね雨柱様」
『ッ…!?余計なことを考えている暇があるなら集中をしろ。』
颯「これでも集中出来ているんですよ?雨柱様、昨夜は寝れなかったのですね。目の下が黒くなってますよ」
こんなに動いているのに何故隈が見える…
ダメだ、この状況で稽古などしていられない。
『っ…今日はここまでだ。今日私は用がある。同行は要らん。同期とでも鍛錬しておけ。』
颯「分かりました。朝早くご苦労様です。」
背中に喜怒川の気味の悪い笑みを感じたまま、私は逃げるように屋敷を後にした。
あいつと二人きりでいられない。
一度煉獄の屋敷に寄ろう。
まぁ、任務から帰ってきたら必ず私の元へ来るから帰ってきていないのは確かだが…
うちの屋敷にいるよりは、マシだ。
最悪他の柱の元へ行けば良い…。
私は煉獄の屋敷へと足を早めた。
**
颯「ふははッ…やっぱり綺麗だ…全てが愛しい…。ねぇ…雨柱様…?」
私が喜怒川の恐ろしさに気づくのは、もう少し後。
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真季 - 最新楽しみにお待ちしてます。長くなってすいません汗 (2021年10月4日 7時) (レス) id: ac0ba7e69a (このIDを非表示/違反報告)
真季 - 初めまして。お疲れ様です。最新も早くて楽しみに読み進めて来ました。夢主よ、どうか自分の気持ち正直になって煉獄さんと恋仲になって下さい…!あの鬼殺の男、怪しい匂いが漂ってますね…。彼女に手を出したその時は是非、煉獄さんの赤き炎刀で…! (2021年10月4日 7時) (レス) id: ac0ba7e69a (このIDを非表示/違反報告)
冴凪(プロフ) - とても面白いです!話のテンポも良くてワクワクしながら読みました!更新ファイトです! (2021年9月30日 22時) (レス) @page12 id: 8d3f590c11 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かふぇらて | 作成日時:2021年9月29日 1時