呪術師はクソなので呪霊との共存を目指したい【呪術廻戦】

【話は】思春期と入学式【脱線する】 ページ6

４月。五条悟、１５歳。書面でしかやり取りできなかった相手と、ようやく会って話すことが叶うようになる日。つまり、呪術高専に入学の日だ。
手紙によると、ひとつ年上の姉がいて、彼女は姉とは折り合いが悪く、東京校に通うつもりでいるとのこと。だから五条悟も東京校の方へ入学するつもりでいた。


珍しく自分自身で身嗜みも整え、万全の状態で高専へと足を運ぶ五条悟。到着時刻は予定より少し早いくらい。
年季の入った木製の扉を開け、教室をぐるっと見渡す。そこには同級生と思わしき黒髪の男が本を読んでる以外に人はいない。


「おはよう。意外だね、こんな早くに。」


黒髪の男――後に夏油傑と名乗った――はちらりと五条悟を一瞥してまた視線を本に戻す。
五条悟は目的の人物がいなくて落胆。待っている間、手持ち無沙汰のため夏油傑にちょっかいをかけ始める。


「人を待ってんだよ。御門院 小春っていう将来の嫁をな」


「御門院家のお嬢様か。それはおめでたいね。」


「お前も会ったら確実に世界変わるぜ？」


「そうかもしれないね。私は姉の方、Aさんに会ってみたいけれど」


「あいつ？やめといた方がいいぜ。術式も呪力も生まれつき弱くて、妹を妬んで意地悪するような女だぞ。」


「え、そうなのかい？」


「小春が言ってた」


御門院家の内情は、全て小春の書面でしか知らない五条悟。当然姉のことをよく思っていない小春が書くのだから、悪意の募った文面になるのは当然のこと。
しかし一方、夏油傑は五条悟の言い方に違和感を抱き始めていた。実は幼い頃に一度だけ、Aに命を助けてもらったことがあったのだ。その際名前を聞いたきりで以降会ったことはないのだが、記憶の限りだと、そういうことをするような人ではないと夏油傑は思案する。


「……まあ、同じ学校ならもう時期会えるだろう。」


空席は残りふたつ。先に埋まったのは五条悟の待ち人ではなかった。家入 硝子という反転術式を使える希少な術師だ。目的は外れたが一応挨拶も兼ねて御門院家について質問してみる五条悟と夏油傑。


「あー、Aさんになら会ったことあるな。なんならその人に教えてもらったし。」


「何をだい？」


「反転術式。」


「神出鬼没すぎね？」


「ラティオス？(姉だから)」


「ラティアスだろ(女だから)」


そこから何故かポケモンの話に脱線して、次に御門院家の話題が出たのは、四つ目の席が埋まった頃だった。

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