その笑顔の裏で ６

二百六十一話　砕け散りし海辺に ページ15

フィッツジェラルドは敦を肩に抱えると、鏡花を振り返り言った。




「君とは、会ったばかりだが、人生経験から忠告しよう。
君に人助けは向いていない。向いているのは＿＿＿＿判るな？」


「如何して？」




フィッツジェラルドの言葉に、鏡花は静かに涙を流しながら尋ねる。




「向いていないなら如何して光を見せたの？如何して望みを抱かせたの？」




しかしその問いに、二人が答えることはなかった。


白鯨が宙に浮き、今まで浸かっていた水が落ちる。

その音が残酷に響いた。


白鯨の中に入ったフィッツジェラルドは、メルヴィルに静かに命じる。




「ステルスをオンに」




その言葉の後すぐ、外から見ていた鏡花の目には白鯨が見えなくなっていた。


やがて、鏡花の周りに武装した人間たちが集まり始める。

そして、大声で命令した。




「手を掲げろ！」

「連続殺人の容疑で逮捕する！」




それを聞いた鏡花は、もう見えなくなってしまった白鯨を見つめながら、一人つぶやいた。




「…………さようなら。
もう私を………光で照らさないで……」









・









それから……一週間が過ぎた


その日、探偵社の隠れ家の医務室でAは目を覚ました。

二百六十二話　秘密→←二百六十話　砕け散りし海辺に

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す