二百四十八話 Q ページ1
敦は血涙を流しながら暴走し、走った。
「僕は違う!僕はただ……!」
そこまでいって、唐突に、敦は深い虚無感に襲われた。
仲間を傷つけた自分が恐ろしくなったのかもしれない。
走っていたはずの敦は止まり、その場に膝をついて蹲った。
またそこで幻覚を見た。
Qの異能によるものか、敦の精神的なものかはわからない。
しかし、敦はその幻覚で、確かに芥川に問われた。
「これで判ったか?己が何者かを」
敦が幻覚に苛まれ、暴走していた時、太宰は焦ったように周囲を見回し、ベンチの下から、人形を見つけた。
顔が引き裂かれた人形は今でも不気味に笑い続けており、異能力が解けていないことを暗示する。
太宰はベンチの下から人形を引き摺り出すと、異能力を発動した。
「消えろ」
【人間失格】
次の瞬間、人形はぼろぼろと崩れ出す。
太宰が敦を確認すると、敦の腕からは痣が消えていっていた。
Qは太宰の後ろでなんとか体を起こしていたAに駆け寄る。
「ごめんね、Aちゃん。本当は恩人のAちゃんを傷つけたくなかったんだけど……。
でも、Aちゃんが入れ替わらなきゃ怪我しなかったんだよ!」
『ごめんねQちゃん。ナオミちゃんたちを怪我させるわけにはいかなくて…』
「もう……僕だって、Aちゃんを傷つけるようなことしたくなかったのに……」
先程まで敦の様子を見て笑っていたとは思えないほど、優しいQの言動。
春野たちは、その様子に困惑した。
『命令だもん、仕方ないんだよね?』
「うん、ごめんね。Aちゃん、これで悪化しちゃったら…」
途中から聞いていた太宰は、「悪化」という言葉が引っかかるも、その話についてはそれ以上触れられることはなかった。
『大丈夫だよQちゃん』
「ありがとう、Aちゃん」
本心から、にこりと可愛らしい笑みを浮かべたQは、太宰の方を振り返ると何事もなかったように歩き出した。
「それにしても、太宰さんの新しいお友達、ずいぶん壊れやすいんだね。
けどいいんだ。太宰さんを壊す楽しみが残ってるもの」
《Q_____夢野久作
______能力名【ドグラ・マグラ】》
「それはおめでとう」
笑顔のQ_____久作に、太宰はマフィア時代のような黒い笑みを浮かべてそう言った。
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??(???)??(プロフ) - 神作品すぎてここまで読んでしまった……夢主ちゃんどうなっちゃうの!?長生きして欲しい……これからも作者様のペースでよろしくお願いします! (1月9日 21時) (レス) @page23 id: 71a0ede70a (このIDを非表示/違反報告)
花見月 - いつも楽しく読ませてもらっています。アンケートですが、1でお願い致します。 (2021年9月24日 0時) (レス) @page5 id: 216d69af47 (このIDを非表示/違反報告)
びっくりさん(プロフ) - 1がいいです。 (2021年9月22日 21時) (レス) @page5 id: d067fbdc83 (このIDを非表示/違反報告)
レイ - 1が良いです。 (2021年9月22日 18時) (レス) @page5 id: 3b590f766f (このIDを非表示/違反報告)
ヒナ(プロフ) - 個人的には1が良いです。 (2021年9月22日 1時) (レス) @page5 id: 91a3e851e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ark | 作成日時:2021年9月12日 7時