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九十七話 うつくしき人は寂として石像の如く ページ49

国木田と敦が医務室に入ると、そこには静かに目を開けた鏡花が横になっていた。

何も話すことなく、ただ目を開けて天井を眺めている。


そんな鏡花に、敦が声をかけた。


国木田は腕を組み、敦の隣に立っている。




「………大丈夫?
ええと………ここは探偵社の医務室。工合(ぐあい)どう?」

「………」




何も反応を返さない鏡花。

敦はそんな鏡花に戸惑いながらも、状況を説明した。


それにも反応しない鏡花に対して、国木田は直球で質問する。




「娘、黒幕の名を吐け」

「………」




しかし、鏡花は一向に何も喋らない。


国木田はそれには構わず続けた。

国木田にとって人の話を聞かない相手など、日常茶飯事とも言えるのだ。




「マフィアの部隊は(うわばみ)と同じだ。頭を潰さん限り進み続ける。答えろ、お前の“上”は誰だ」




寝ている鏡花に対して、高圧的に話しかける国木田。

その様子を見ていられなくなったのか、敦が国木田を宥めに入った。




「く、国木田さん」

「……橘堂の湯豆腐」

「へ?とうふ?」




しかし敦が言葉を続けるより先に、鏡花が初めて言葉を発する。

その第一声が豆腐であることには、敦も混乱した。


鏡花の言葉を理解するべく反芻する敦に加え、国木田も面食らったような表情をする。

鏡花はそんな二人に、一言言った。




「おいしい」

「…………?」




その言葉にまだ疑問符の絶えない敦。

しかし国木田は、鏡花の言いたいことを理解した。




「食わせろ、と云う事か?」


「食べたら話す」


「なあんだ。良いよその位」




国木田の言葉を肯定する鏡花。

それに対して敦はそう言って、にこやかに笑う。


そんな敦に、国木田は信じられないとでも言いたげな国木田。




「………え?」




よくわからない国木田のその反応に、敦は不思議そうな声を漏らした。

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ark(プロフ) - あきあきさん» ありがとうございます!そう言って貰えて嬉しいです!!これからもよろしくお願いします! (2021年2月28日 5時) (レス) id: 875b3ab9f7 (このIDを非表示/違反報告)
あきあき - 最初から読ましていただきました!すっごく面白いです!原作+夢主のかけあいとかが好きです!頑張ってください! (2021年2月28日 4時) (レス) id: 2068c5b889 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ark | 作成日時:2021年1月17日 22時

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