七話 人生万事塞翁が虎 ページ8
「ふうん。君、施設の出かい」
太宰のその質問に、敦は少し表情を暗くした。
そして少し言葉を訂正しながら話し出す。
「出というか...............
追い出されたのです。経営不振だとか、事業縮小だとかで」
それを聞いた太宰とAは、一瞬目配せし合う。
そして、何も無かったかのように話を続けた。
『それは大変だったね...』
「.......しかし、薄情な施設もあったものだね」
二人の同情の言葉を聞いたあと、国木田は仕事に戻ることを促す。
「おい太宰、俺たちは恵まれぬ小僧に慈悲を垂れる篤志家じゃない。仕事に戻るぞ。Aも、社に戻って今日の残りの仕事を片付けた方がいいんじゃないか?」
『それもそうだね...』
頷くAに、敦が疑問を抱く。
「三人は.........何の仕事を?」
「なァに.......探偵さ」
太宰はキメ顔でそういう。
それを聞いてポカンとする敦。
そこに国木田が補足をつけ加えた。
「チッ.....探偵と云っても、猫探しや不貞調査ではない。斬った張ったの荒事が領分だ。異能力集団【武装探偵社】を知らんか?」
それを聞いた敦は、何かを思い出すように手を組んだ。
「(【武装探偵社】.....聞き覚えがあった。
曰く、軍や警察に頼れないような危険な依頼を専門にする探偵集団____
昼の世界と夜の世界、その間を取り仕切る薄暮の武装集団
なんでも、【武装探偵社】の社員は多くが異能の力を持つ【能力者】と聞くが_____)」
敦は考えながらも、何やら変な会話を繰り広げている二人を見つめる。
そして次に、自分の隣に座るまだ幼い女の子を見た。
「(本当かなあ.........)」
どう見ても、敦の目にはそんな特別な人達には見えなかった。
Aはまだ自分より四つか五つ年の離れた女の子である。
そんな危険な仕事をしているとも思えず、できるようにも見えなかった。
「そ...それで、探偵のお二人の今日の仕事は」
「虎探し、だ」
「...............虎探し?」
「近頃、街を荒らしている【人食い虎】だよ。倉庫を荒らしたり、畑の作物を食ったり、好き放題さ。
最近この近くで目撃されたらしいのだけど____」
敦の質問に、淡々と説明していく太宰。
それを聞いた敦は、いきなりガタッと大きな音を立てて座っていた椅子から落ちる。
そして、何かに恐怖するような表情で床に座り込んでいた。
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作者名:ark | 作成日時:2021年1月4日 18時