その笑顔の裏で (ページ7)

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六話　人生万事塞翁が虎ページ7

『(...おお)』

暖かみのある明かりの下、何枚もの器が積み上がっていく。

そんな様子を見て、Aは感心していた。

目の前にいる敦は、がつがつと茶漬けを貪っている。

もしかしたら、本当に三十杯くらいいくのではないか.....。

そう思ったAは、もしそうなったら半分払ってあげようと、心の中で考えていた。

国木田は、目の前の敦の食いっぷりに自分の財布を心配しながらも、手帳に目を落とし太宰に声をかけた。

「おい太宰、早く仕事に戻るぞ
仕事中に突然「良い川だね」とか云いながら川に飛び込む奴がいるか。おかげで見ろ、予定が大幅に遅れてしまった」

「国木田君は予定表が好きだねぇ」

太宰はそれを聞いても座ったままで、国木田の地雷を踏み抜いた。

それを聞いた国木田は、店の机が割れそうになる勢いで手帳を机に叩きつける。

「これは予定表では無い！！理想だ！！
我が人生の道標だ。そしてこれには、［仕事の相方が自殺嗜癖］とは書いていない」

『(逆にそれ書いてあったらやばいよ。予言者だよ)』

国木田の言葉に、Aは心の中で冷静にツッコミを入れる。

そんな様子を茶漬けを食べながら見ていた敦は、口の茶漬けを飲み込むことなく話に入ってきた。

「ぬんむいえおむんぐむぐ？」

「五月蝿い。出費計画の頁にも、［俺の金で小僧が茶漬けをしこたま食う］とは書いていない」

『書いてたら怖いよ』

苦笑するA。

敦はそれを聞くと、話を変えた。

「んぐむぬ？」

「だから仕事だ！！俺と太宰は軍警察の依頼で猛獣退治を＿＿＿」

「君達なんで会話できてるの？」

それまで珍しく静かに話を聞いていた太宰は、頭に疑問符を沢山浮かべて質問したが、それには誰も答えなかった。

そして、それからまた少しした後、敦が茶漬けを食べ終わる。

「はー、食った！もう茶漬けは十年は見たくない！」

「お前.....」

『敦くん...』

膨らんだお腹を擦りながら言う敦に、国木田はイラつく。

Aも少し呆れている。

しかし敦はそれに気づかず、お礼を言った。

「いや、ほんっとーに助かりました！
孤児院を追い出され、横浜に出てきてから食べるものも寝るところもなく.....................あわや斃死かと」

その言葉に、太宰が興味を示す。

Aも敦の方をむいて話を聞く姿勢になった。